天部に位置し仏法を守護する護法善神の八部衆には、天衆、龍衆、夜叉衆、乾闥婆衆、阿修羅衆、迦楼羅衆、緊那羅衆、摩睺羅伽衆がいますが、今回はそんな中から蛇を神格化した竜、竜王などと称される種族・龍に注目してみます。
※)全体的な整理を行っている”日本の仏像に魅せられて”や”自分を守ってくれる守護本尊!”、”アジアンユニット 招福七福神めぐり”も参考にしてください。
龍、竜、竜王は、中国の想像上の神獣である龍を人格化した神格、または、インドから漢訳仏典とともに漢字文化圏に伝わった蛇形の鬼類であるナーガやその王・ナーガラージャのことです。
仏典に記されたインドの蛇形の精霊であるナーガは、中国に伝わり、仏教の八大竜王や八部衆の一つである竜と、中国古来の竜の観念が習合して、インド伝来の竜王とはまた別の、四海竜王などの道教の竜王信仰が定着しました。
日本では六壬神課の十二天将の一つである勾陳が金色の蛇とされ、黄色は中央を守る色であり京都の中心を守るとされています。
日本でも竜・竜王は水を司る水神とされ(竜宮様とも呼ばれる)、竜神信仰においては中国伝来の竜と日本の水神・蛇信仰が習合しています。
古代中国で竜といえば、天地を往来する霊獣であり、瑞祥の生きものである四霊の一つであり、五行説の東方・木行・青に当てはめてられる四神の一つ「青竜」です。
古くは『淮南子』地形訓に黄竜、青竜、赤竜、白竜、玄竜の名があり、竜を五方と五色にむすびつけた東方青竜、南方赤竜、西方白竜、北方黒竜、中央黄竜の五方竜王は魏晋以降の仏教や道教の経典にあらわれ、仏典の影響下で隋唐期までに成立したと考えられています。