万葉集の時代から愛される「あじさい(紫陽花)」の風情を、存分に楽しみましょう。

夏の季語でもある「あじさい(紫陽花)」の花が、いま盛りです。

この語源ですが、先に「あじさい」という呼び名があり、後から「紫陽花」という字をあてたと言われています。
勿論諸説ありますが、最も有力なのは、藍色が集まったものを意味する「集真藍(あづさあい/あづさい)」がなまったという説。
ちなみに、最初に文献に現われたのは日本最古の和歌集『万葉集』(西暦780年)で、「味狭藍」「安治佐為」と書かれており、平安時代の辞典『和名類聚抄』では「阿豆佐為」と書かれています。
それが「あじさい」になったのは、唐の白居易が別の花につけた「紫陽花」を、平安時代の学者が「あじさい」にあてたからだとか。。
が、その後も「天麻裏」、「よびら」へと変わり、明治以後再び「あじさい」に戻ったのだそうです。

『万葉集』
 言問はぬ木すら味狭藍(あじさい) 諸弟らが 練の村戸にあざむかえけり(大伴家持 巻4 773)
紫陽花の八重咲く如くやつ代にを いませわが背子見つつ思はむ(橘諸兄 巻20 4448)

『散木奇歌集』
あぢさゐの 花のよひらに もる月を 影もさながら 折る身ともがな(源俊頼)
『千五百番歌合』
夏もなほ 心はつきぬ あぢさゐの よひらの露に 月もすみけり(藤原俊成)
あぢさゐの 下葉にすだく蛍をば 四ひらの数の添ふかとぞ見る(藤原定家)

「あじさい」の花言葉は、強い愛情、移り気なこころ、一家団欒、家族の結びつき、など様々。
花言葉からもわかるように、梅雨どきの雨に打たれながら、憂いを含んだ佇まいと風情が、私達日本人の感性には強く響くのかもしれません。
文学だと、永井荷風の「あぢさゐ」や、吉行淳之介の「紫陽花」といったところでしょうか。

こうした「あじさい」ですが、6月の6のつく日に、あじさいを逆さまに吊るしておくと厄除けになるといわれています。
玄関に吊るせば厄除けになりお金が貯まる、部屋に吊るせばお金に困らない、トイレに吊るすと病気にかからないなど、いろいろな説があります。
というのも、もともと昔から商売繁盛を願って蜂の巣を吊るす風習があり、あじさいが蜂の巣に似ていることから、金運の花とされているからだそう。
病気除けは、「寝(根)付かず」=「健康」に通じるからだとされています。
ま、一度お試しあれ。

そして、「あじさい」を境内に多く植えたアジサイ寺が全国各地にありますよね。
雨の時期の外出はあまり気乗りしませんが、「あじさい」を愛でに出向くとなると話しは別。
三重県桑名市「なばなの里」には、敷地8000坪とあじさい園としては日本最大の中に50種類70,000株のあじさいと、50種8,000株の花しょうぶが咲き誇っています。
神戸市の裏六甲ドライブウェイおよび奥摩耶ドライブウェイ沿いには延々とアジサイが自生していますし、最近すっかり観光客が減ってしまった箱根登山鉄道では、開花時期に合わせ夜間ライトアップされたアジサイを楽しめる特別列車が運行されています。

梅雨時であるからこそ、「あじさい」を機にお出かけしてみてはいかがでしょうか。

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