歌舞伎は世界に誇る、日本の伝統芸能です。
しかし、元々400年前に登場したときには、大衆を喜ばせるための一大エンターテイメントだったのです。
なんとなく難しそうなので、ということで敬遠されている方も多いのかもしれませんが、そもそもは庶民の娯楽だったもの。
一度観てみれば、華やかで心ときめく驚きと感動の世界が広がっているのです。
しかも歌舞伎は、単に400年もの間、ただただ伝統を受け継いできただけではありません。
時代に呼応して常に変化し、発展・進化してきているのです。
This is ” KABUKI ” ( ノ゚Д゚) もっと歌舞伎を楽しもう!(4) 演目の分類と一覧について
前回は歌舞伎の演目をざっと整理してみましたので、ここからは具体的な演目の内容について触れてみましょう。
今回は、天保年間に七代目市川團十郎(当時五代目市川海老蔵)が市川宗家のお家芸として選定した18番の歌舞伎演目・歌舞伎十八番(当初は歌舞妓狂言組十八番)の中から『鳴神』です。
『鳴神』は、滝壺に世界中の竜神を封じ込めて雨を降らせないようにした鳴神上人が、美しい女性の色香に惑わされて破戒堕落し、悪鬼となって荒れ狂う物語で、能『一角仙人』の趣向を発展させた作品であり、前半の濡事と後半の荒事との対照に特色があります。
初代も演じていますが、現行の復活台本は二代目が演じた『雷神不動北山桜』に含まれていたものを基にしています。
ちなみに『雷神不動北山桜』は、その三幕目が『毛抜』、四幕目がこの『鳴神』(正式には、雷神不動北山桜北山岩屋の場)そして五幕目大切が『不動』となっているのです。
【鳴神】
世継ぎのない天皇からの依頼をうけて、鳴神上人は寺院建立を約束に皇子誕生の願をかけ、見事これを成就させる。
しかし当の天皇が寺院建立の約束を反故にしたため、怒った上人は呪術を用いて、雨を降らす竜神を滝壷(志明院)に封印してしまう。
それからというもの雨の降らぬ日が続き、やがて国中が旱魃に襲われ、民百姓は困りはててしまった。
そこで朝廷では女色をもって上人の呪術を破ろうと、内裏一の美女・雲の絶間姫を上人の許に送り込む。
姫の色仕掛けにはさすがの上人も抗しきれず、思わずその身体に触れたが最後、とうとう戒律を犯し、さらには酒に酔いつぶれて眠ってしまう。
その隙を見計って姫が滝壷に張ってある注連縄を切ると封印が解け、竜神がそこから飛び出すと一天にわかにかき曇ってやがて豪雨となり、姫はその場を逃げ去る。
雨の音に飛び起きた上人はやっと騙されたことに気づき烈火のごとく怒り、髪は逆立ち着ている物は炎となって姫を逃さじと、その後を追いかける。