【千夜一夜物語】(9) 鳥獣佳話(第146夜 – 第151夜)

前回、”オマル・アル・ネマーン王とそのいみじき二人の王子シャールカーンとダウールマカーンとの軍物語”からの続きです。

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【鵞鳥と孔雀の夫婦の話】

ある孔雀の夫婦の所に、鵞鳥が一羽逃げてきた。
聞くと「私はある夜、夢で『人間に注意せよ』と聞き、やみくもに逃げ出したところ、若いライオンに会った。
そこへ人間から逃げ出したロバ、馬、ラクダが次々来て、口々に人間の怖さをライオンに話して逃げていった。
そこへ人間が来て、ライオンは罠にかかって殺され、私は恐怖のあまり、ここまで逃げて来ました。
」と鵞鳥は言った。
そこに信心深い牡鹿が来た。
牡鹿と孔雀の夫婦は毎日神に祈りを捧げたが、鵞鳥は忘れることがあった。
ある日、人間が来て、牡鹿と孔雀の夫婦は逃げることができたが、鵞鳥は捕まり、食べられてしまった。

【羊飼いと乙女の挿話】

ある国に、信仰心の厚い羊飼いがいたが、あるとき、神が信仰心を試そうと、天使に羊飼いを誘惑するように命じた。
天使は若く美しい女の姿になり、羊飼いを誘惑するが、羊飼いは誘惑に負けず、信仰心を示した。

【亀と漁師鳥の話】

漁師鳥が獲物を探していると、禿鷹が見えたため、遠くへ逃げた。
そこで亀と友達になり、互いに出会えたことを神に感謝した。

【狼と狐の話】

狼は狐を奴隷扱いし、いつも横暴に振舞っていた。
ある日、狐は葡萄畑に人間が作った落とし穴を見つけ、狼を誘い出し、穴に落とした。
狼は助けを請うが、狐は助けず、「鷹が鷓鴣を襲ったが、巣穴に逃げられ捕まえられなくなった。
鷹は餌をあげると鷓鴣を騙し、巣穴から出たところを捕まえ食べるが、鷓鴣は自分の肉が毒になるようと呪い、鷓鴣も鷹も死んだ。
」という「鷓鴣と鷹の話」をした。
狼が助けてくれたら助言者になると言うと、狐は「自分の病気が治せない医者の話」をし、穴から自力で脱出できない狼の助言など役に立たないと言った。
さらに、「蛇を助けて蛇に咬まれて死んだ人の話」、「子供を虐待すれば、恨みを抱き、大人になったときに復讐されても不思議ではない」と話し、大声を出して人を呼び、集まった人が狼を見つけ狼を殺すのを遠くから見ていた。

【小鼠と鼬(いたち)の話】

鼬(いたち)は胡麻の皮を剥く女の家で胡麻を一皿見つけ、腹いっぱい食べた。
そして盗みの罪をなすりつけるため、小鼠に皿に胡麻が残っていることを教え、食べに行くようにそそのかした。
小鼠は鼬の計略に気づかず、胡麻を食べているところを女に見つかり、胡麻を全て食べたと思われて殺されてしまった。

【烏と麝香猫の話】

烏と麝香猫が森で話をしていると、虎の鳴き声が聞こえた。
烏は木の上に逃げたが、麝香猫は逃げ場に困り、烏に助けを求めた。
烏は羊飼いの犬を何匹もけしかけ、森に誘導した。
森に犬が増えたため、虎は森から出て行った。
こうして烏は麝香猫を救った。

【烏と狐の話】

ある所に獲物をとれないほど年老いた悪い狐がいて、食べ物がなくなったので自分の子供と妻を食べた。
狐は近くにいた烏を手下にして食料を持って来させようと、話しかけた。
烏は警戒したので、狐は「蚤が人から追われていたのを小鼠が巣穴にかくまい、小鼠が家の主人から金貨を盗めるよう、蚤が家の主人を刺しまくり水浴びをさせた」という「蚤と子鼠の物語」をして、異種族の動物間の友情を説いた。
しかし、烏は「若い頃横暴だった禿鷹が、年老いて獲物を取れなくなり、若い頃の横暴さのため、誰からも軽蔑された」という「禿鷹の話」をして狐の本当の目的を言い当てた。
また「大鷲が子羊をさらって行ったのを見た雀が、大きな羊をさらおうとしたが、羊を持ち上げることができず、逆に羊の毛が足に絡まって動けなくなり、羊飼いに殺された」という「雀の話」をして、年老いた狐が、元気な烏と対等の関係を築こうとするのは、雀のように僭越だと言った。
狐は烏を手下にするのをあきらめて、去っていった。

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次回は、美しきシャムスエンナハールとアリ・ベン・ベッカルの物語です。

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