今回は日本を代表する伝統工芸のひとつで、あまりなじみのない自在置物についてです。
あなたは自在置物ってご存じですか?
匠の技が結集した日本古来の稼動フィギュアの原型、というのはちょっと雑な表現かもしれませんが、とにかく何故これだけのものが一般的な形で知り渡っていないのかが不思議なぐらい、匠の技が垣間見える素晴らしい金属工芸です。
いわゆる金属工芸にもいろいろあり、
・金工芸だと、蒔絵や、金箔、沈金、金仏壇
・鉄工芸だと、鍛冶屋、刀工、南部鉄器
などが代表的なものですが、その他も各種多岐に渡り、また技法自体も
・鋳造、彫金、鍛造、鍍金…
とそれぞれの特質を生かした優れたものがあります。
これらひとつひとつについても、いずれじっくりと整理していく予定ですが、今回は自在置物についてちょっとだけまとめてみましょう。
自在置物の起源は江戸時代中頃に甲冑師によって生み出された鉄製の工芸品です。
戦乱の世も終わり、戦いのため甲冑や武具などの需要が減る中、日用生活品を鉄などの金属加工で製造して生計を立てざるを得なくなったという時代背景もあるようです。
主な材料としては、鉄、銅、銀を始めとする各種材料を使用(一部は木製もあり)し、龍や実際の動物を実物と寸分違わぬ造詣で打ち出し、関節や体節などの細部を作り込んで本物のように動かすこともできる仕組みとした、古来の超合金プラモデルともいえる金属加工工芸品です。
自在置物として完成した作品のうち、現存最古の年号が記されたものは「正徳三癸巳歳六月日」(1713年)の銘が刻まれた明珍宗察作の龍の置物だそうで、明治にかけては(浮世絵と同様)海外でも高い評価を得ています。
近年においても、国内では自在置物自体があまり高い知名度を得る機会も少ないまま今日に至っているようです。
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実際にネット上に残る写真や書籍などをみて頂くとお分かりのように、
外観:線刻・鏨打ち・裏打ち出しなどの技法をもって、鱗や羽の模様、とげの凹凸といった生物の外観を写実的に表現
内部構造:実際の生物の動作を忠実に再現するため、体節、関節部の連結、羽や鰭の接続、可動性、歯車で左右部品の動作を連動
といったより高度な機構を持つ作品も存在するようですので、単なる加工工芸品でないことは明らかです。
こうしたことから、フィギィアのように多彩な動きや自由なポーズをとることが可能なため、単にあるがままを眺めるだけでなく、触れて動かして形を変えて楽しめる、古くからの娯楽工芸品であることが伺える訳です。
古くからの日本文化を改めて見直す時期にあって、もっと自在置物の裾野(作り手、買い手双方)を広げ、世界に展開できる伝統工芸品として活性化できればいいですね。
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