This is ” KABUKI ” ( ノ゚Д゚) もっと歌舞伎を楽しもう!(3) 演出について

歌舞伎は世界に誇る、日本の伝統芸能です。
しかし、元々400年前に登場したときには、大衆を喜ばせるための一大エンターテイメントだったのです。
なんとなく難しそうなので、ということで敬遠されている方も多いのかもしれませんが、そもそもは庶民の娯楽だったもの。
一度観てみれば、華やかで心ときめく驚きと感動の世界が広がっているのです。
しかも歌舞伎は、単に400年もの間、ただただ伝統を受け継いできただけではありません。
時代に呼応して常に変化し、発展・進化してきているのです。

This is ” KABUKI ” ( ノ゚Д゚) もっと歌舞伎を楽しもう!(1) 暗黙知の世界。
This is ” This is ” KABUKI ” ( ノ゚Д゚) もっと歌舞伎を楽しもう!(2) 役柄の見分け方。

前回、前々回では歌舞伎におけるお約束事を説明してみましたが、今回はもう少しだけその続き、演出についてです。

【見得】
歌舞伎の演出主人公が心理的、物理的な追い詰められ、感情の昂揚が頂点に達した時に、劇中、動きを止めて形を決める歌舞伎特有の演技をいいます。
感情の高まりなどを表現するために、演技の途中で一瞬ポーズをつくって静止する演技をさし、その人物をクローズアップさせる効果があります。
黒目を寄せてにらむ、口を開けて目を剥くなど、極端な表情や姿形で、まさに息詰まる瞬間の主人公を大映しにし、時間を止めるような効果をもたらします。

多くの場合、「見得」の瞬間には緊迫感をさらに強調するため「バッタリ」という「ツケ」の効果音が打たれます。
「立役」を中心に行なわれますが、役柄や作品内容によって表現は異なります。
なお見得にはいくつかの種類があり、石を投げる形に見せる「石投げの見得」、不動明王の形の「不動の見得」、柱に巻きつく「柱巻きの見得」、勇ましい「元禄見得」などが有名です。
また、複数の登場人物が同時に見得を切る「引っ張りの見得」、舞台上の全員が絵のように静止する「絵面の見得」などもあります。
「荒事(あらごと)」の役では、より効果的に見せるために、直前に大きく首を振ったり、足を大きく踏み出したり、手を大きく広げたりする動作を伴います。
また若衆役(わかしゅやく)や「世話物(せわもの)」の役では、あごを引く程度の小さな動きで表現します。

「幕切」の大見得では、「ツケ」が細かく打たれた後に、大きく打ち上げられて、主役を中心にして主だった人物が同時に「見得」をするため、「打上げの見得」ともいわれます。

いわゆる「大見得を切る」[自信たっぷりに装い、大げさな言動をとる]という言葉は、歌舞伎からきているんですね。

【外連 ケレン (引抜・宙乗り・人形振り)】

歌舞伎の演出「外連」とも書きますが、曲芸的な演技や奇抜な演出で、意表をつく仕掛けで観客を驚かせ、楽しませる工夫がなされています。
瞬時に鬘も衣装も変えて違う人物に替わる「早替わり」、宙を飛ぶ「宙乗り」などがあります。
「外連」という漢字が当てられ、目立つためだけの演出とみなされ、本格的な演技や演出からは外れている、というニュアンスがあります。
幽霊や怪異、狐などの人間と異なる動きの描写、芝居の流れに即して用いられる場合は、視覚的な効果をあげます。

「東海道四谷怪談」の「ちょうちん抜け」「仏壇返し」「戸板返し」、「義経千本桜」の狐忠信の「高欄渡り」や「宙乗り」などが知られています。

・【引抜】
舞台上で、衣裳を一瞬にして変える演出の1つです。衣裳をあらかじめ重ねて着込み、仕付け糸で留めておきます。
直前に後見[舞台上で演技を補助する係]が、留めてある仕付け糸を抜き取り、俳優とタイミングを合わせて上に着込んだ衣裳を取り去ります。
観客の目先を変える演出として、おもに舞踊で行われます。
また「引抜」の中には、「ぶっ返り」とよばれる手法があります。
これは衣裳の上半身の部分を糸で留め、この糸を抜くことで衣裳がパラリとめくれ、腰から下に垂れる仕掛けになっています。
この演出は、登場人物が本性を現したり、性格が変わったりすることを視覚的に表現します。

・【宙乗り】
俳優が舞台や客席の上を吊られて移動する演出で、幽霊や妖怪、狐など非現実的な役で行なわれます。
江戸時代には縄を使って俳優の体を吊っていましたが、現在ではワイヤーを使用するなど改良され、安全性も考慮して行なわれています。
「花道(はなみち)」の付け根辺りから上昇し、3階の客席まで移動するのがオーソドックスな演出です。

・【人形振り】
人形浄瑠璃[文楽]から歌舞伎に移された演目である「義太夫狂言」において、俳優が人形の動きをまねて演じることをさします。
多くは女方の役、特に娘役の感情が極限に達する場面で用いられます。
「人形振り」で演じられる登場人物の背後には、必ず人形遣い役の俳優がいて、体を支えながらあたかも人形を動かしているように「人形らしさ」を演出します。
また「人形振り」の最中は、俳優はせりふをしゃべらず、「竹本」の語りで進行します。

【立廻り】
切り合いや格闘の場面で行なわれる、様式的な動きを「立廻り」といいます。
1対1の設定もありますが、多くの場合は「シン」とよばれる主役に向かって、「搦み」とよばれる大勢の軍兵や捕り手に扮した脇役の俳優が挑みかかります。
一連の動きは、「下座音楽」に合わせて流れるように演じられ、「シン」は要所で「見得」を行ないます。
「搦み」が、切られたり投げられたりする時には、「とんぼ」とよばれる宙返りをします。
これらの動きすべては、「立師」とよばれる俳優が、上演の都度「シン」の演じる役柄や好みに合わせて考案します。
また舞踊作品の中に、「立廻り」が組み込まれている場合もあります。
これを「所作ダテ」とよび、通常の「立廻り」以上に音楽に合わせた動きで表現されます。

【六方】
手足の動きを誇張して、歩いたり走ったりする様子を象徴的に表現した演出をさします。
おもに「荒事」の役が「花道」を引込む時に演じられ、力強さと荒々しさを観客に強く印象付けます。
「六方」には、さまざまな種類があります。
『義経千本桜』通称「鳥居前」の佐藤忠信、実は源九郎狐は、「荒事」の豪快な動作の中に狐のしぐさを垣間見せる「狐六方)」で引込みます。
また『宮島のだんまり』の傾城浮舟太夫、実は盗賊袈裟太郎は、手の動きは盗賊らしく大きく、足の動きは遊女、という独特の「傾城六方」を見せます。
中でも有名なものとして、『勧進帳』の弁慶などで行なわれる「飛び六方」が挙げられます。

【黙り だんまり】
だんまりの語源は「黙り」で、一言も言葉を発せずに運ぶ一幕です。
暗闇の中という設定の下、複数の人物や宝物や紛失物等、芝居の鍵となる物を求めて無言のまま探り合い、立回りを見せる場面です。
といっても、実際に舞台上を暗くするわけではなく、手探りで動くなど、演者が「見えない」という前提で観客に暗闇という状況を感じさせます。
ゆったりした音楽にのり、ところどころ見得をきりながら、スローモーションのように動く役者の姿形を見るところが、だんまりの面白さです。
劇中の一部分の「世話だんまり」と、独立した一幕の「時代だんまり」があります。
後者は筋らしい筋はなく、一座の主な役者が大盗賊や姫君といった派手な扮装で、顔を見せる「顔見世」を目的とします。
「宮島のだんまり」などに見られます。

【屋台崩し】
御殿や屋敷などの屋台(建物)が崩れる様子を見せる大仕掛けな演出です。
天変地異や妖術使いが出る演目などで行なわれます。
舞踊劇「将門」では、煙とともに建物が潰れていく様が豪快で妖術の力の大きさを感じさせます。
「天竺徳兵衛」「地震加藤」などに見られます。

【戸板返し】
一枚の戸板の表と裏に打ちつけられたふたりの人物をひとりの役者が早替わりで演じる演出です。
「東海道四谷怪談」「隠亡堀の場」が有名ですね。
民谷伊右衛門が、流れてきた戸板を引き寄せると、まずお岩の死体が現れ、驚いてその戸板を裏返すと、今度は雇い人だった小仏小平の死体が現れ、さらにひっくり返すと、お岩が骸骨になっている仕掛けです。

【仏壇返し】
仏壇の前にいた人物がその中に引き込まれる演出。仏壇の後ろに水車のような装置があり、その回転を利用しています。「東海道四谷怪談」「蛇山庵室」では、伊右衛門をそそのかした友人、秋山長兵衛が、お岩の幽霊に連れ込まれます。長兵衛が消えると、元の仏壇に戻るという仕掛け。

【提灯抜け】
燃え上がる提灯の中を幽霊がすりぬけてくる演出です。
「東海道四谷怪談」「蛇山庵室」で行なわれます。
提灯が燃えつきようとする瞬間に、お岩役の俳優が箸箱のような装置に乗って押し出されてきます。
提灯の中から出てきたように見えます。

【面灯り】
黒衣が長い柄のついた蝋燭の灯で、登場人物の姿を左右から照らします。
役者の登場を印象づけたり、その怪しさを際立たせるための手法です。
灯がちらちらと揺れる風情に古風な趣があります。

【殺し場】
歌舞伎では殺人が行なわれる場面を「殺し場」と呼び、大立回りで殺す様子をじっくり見せます。
殺しという本来は陰惨な状況を、背景に流れる音楽のリズムに乗った舞踊的ななめらかな動きで、ところどころ見得をきり、様式的に美しく演出されています。
殺される側は一突きに殺されることはなく、じわじわと追い詰められ傷つけられ逃げまどい、殺す側も刀をふりかざし、どこまでも追う、といった陰湿な加虐と被虐の美が描写されます。
「夏祭浪花鑑」「長町裏」の義平次殺しでは、夏祭りの囃子、殺し場の泥、そして役の扮装が独特の美学を写し出します。
「曽我もようたてしの御所染」の「ほととぎす殺し」では、ある大名の美しい愛妾が、正室の母に毒を盛られ、苦しみもがきながら陰惨に惨殺されていく様に、残虐の美を写し出し、殺される側のしなやかな肢体と残酷さが際立つ場面です。

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