『三国志演義』第四十六回 奇謀を用いて孔明箭を借り、密計を献じて黄蓋刑を受く

さて魯粛は周瑜に言われて諸葛亮の様子を探りに舟を訪ねた。すると諸葛亮は、
「蒋幹を手玉に取った計略と毛玠と于禁が新たな水軍都督となったことで江東ももはや磐石。お祝いいたそう。」
魯粛はそれを聞いて開いた口がふさがらなかった。それを聞いた周瑜は仰天して、諸葛亮抹殺を計画した。魯粛は諌めたが、
「理由もなしに斬ったりはせぬ。殺されても文句の言えないようにしてやる。」
と言った。
翌日、周瑜は諸葛亮に10万本の矢を十日で集めて欲しいと軍議の場で言った。諸葛亮は、
「魏がいつ攻め入って来るやもしれませぬ。十日もかかっては物の役に立ちますまい。3日で集めましょう。」
と言った。周瑜は大いに喜んで書付を取らせて酒を出してもてなした。
諸葛亮は、後で魯粛に足の速い舟を20隻借り、それぞれに兵を30人ばかり乗せ藁束を積んだ。そして20隻の舟を綱でつなぎ合わせて北岸に向けて漕ぎだした。
舟を見つけた曹操は、伏兵を警戒して岸辺から舟を弓矢で雨のように射た。そして、陸陣からも加勢させて1万人余りの兵から矢を浴びせた。
朝日が見え出すと諸葛亮孔明は慌てて舟をひるがえして退却した。
そして、
「丞相矢を有り難く申し受ける」
と叫ばせた。声を聞いた曹操は遠く追うこともできない舟を見て無念の牙を噛んだ。
陣屋に戻った諸葛亮は舟に刺さった10余万本の矢を周瑜に渡した。周瑜は感服して
「それがしのおよぶところではない。」
と洩らした
そして、2人は共に魏に対して火計で挑む事を決意した。

さて、10余万本の矢を無駄にした曹操は、荀攸の計で蔡瑁の従兄弟蔡中、蔡和を呉に投降させて動静を探らせようとした。
呉に投降した蔡中、蔡和を周瑜は厚くもてなした。

その夜、黄蓋が人目を忍んで周瑜に苦肉の計を持ちかけた。黄蓋は翌日軍議で降参すべきであると進言し、怒った周瑜は
「降参を口にする者は斬るを殿が仰せになったのを忘れたか。士気を乱すような事は許さぬ。」
と言って打ち首にしようとしたが、周りの者がとりなして罰棒をくらわせた。背中を負傷して陣屋に伏せていた黄蓋は、参謀の闞沢に魏に投降するための書面を届けてもらおうとする。

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