十二経のひとつ、爾雅とは「四書五経」を正しく読むための現代版ウィキペディア!

『爾雅』は十二経の一つで、漢代に成立されたとされる辞書であり、現在に伝わるものとしては中国最古の3巻19篇から成る字書です。
元祖Wikipediaとでもいえばよいでしょうか。
そもそも前漢から後漢にかけて、言語学的に価値ある辞書類は『爾雅』、『方言』(揚雄)、『説文』(許慎)、『釈名』(劉熙)などが作成されています。

『方言』は最古の方言字典で、正式には『輶軒使者絶代語釈別國方言』(ゆうけんししゃぜつだいごしゃくべっこくほうげん)といいます。
各地から長安の都に往来した人々の言葉を收集しており、共通語とともに解説しているもので、注釈では、晋の郭璞の『方言注』、清の戴震の『方言疏證』などがあります。

『説文』は最古の部首別字典で、正式には『說文解字』(せつもんかいじ)といいます。
叙1篇、本文14篇。部首540、見出し字9353字、重文1163字から成り、各見出し字を親字として篆書(小篆)をあげて、その意味の解釈をしています。
注釈では、清の段玉裁の『説文解字注』30巻(段注説文解字)、桂馥の『説文解字義証』、朱駿声の『説文解字通訓定声』などがあります。

『釈名』は8卷から成る字典で、『爾雅』の分類法が流用され、釈天、釈地、釈山、釈水、釈丘、釈道、釈州國、釈形體、釈,姿容、釈長幼、釈親屬、釈言語、釈飲食、釈綵帛、釈首飾、釈衣服、釈宮室、釈床帳、釈書契、釈典藝、釈用器、釈樂器、釈兵、釈車、釈船、釈疾病、釈喪制の27篇に分類され、1502條が収められています。
注釈では、清の畢沅『釈名疏證』、それを王先謙が補った『釈名疏證補』があります。

そこで『爾雅』についてです。
古典中の字句を集め、各篇の名は「釈○○」となっており、その意味により、釈詁、釈言、釈訓、釈親、釈宮、釈器、釈樂、釈天、釈地、釈丘、釈山、釈水、釈草、釈木、釈蟲、釈魚、釈鳥、釈獸、釈畜の19篇に分類され、釈詁・釈言・釈訓では動詞・形容詞・代名詞等を集め、それ以下は、その篇名に関する名詞を集めています。
周公旦がその一部を作ったという説から、漢代の儒者が作ったという説までありますが、定かではありません。
『爾雅』という名前の由来については、「爾」は近づく、「雅」は正しいと解釈すべきではないかとされています。
注釈には、晋の郭璞の注、北宋の邢昺疏の『爾雅注疏』(『十三経注疏』所収)、清の邵晋涵『爾雅正義』・郝懿行『爾雅義疏』などがあります。

元々「五経」「四書五経」を正しく読むための字書とされていましたが、実際には「五経」に見える語は全体の3,4割にすぎません。
五代の頃、唐石経をもとに儒家の経書群が刊刻され、九経の他、「孝経」、「論語」、「爾雅」、宋代の「孟子」も経書群に加えられ、このときに「十三経」が成立し、『爾雅』は経学研究において重要な書物の一つとなっています。

全文については、以下を参照ください。
『爾雅』全文http://ctext.org/er-ya/zh

以下、各篇を簡単にまとめておきます。

【釈詁】 動詞を中心にまとめられた篇。この篇が爾雅でもっとも初期に作られた篇とされる。
【釈言】 動詞を中心にまとめられた篇。釈詁から漏れた語を集めて作られた篇とされる。
【釈訓】 畳語を中心にまとめられた篇。
【釈親】 親兄弟・親戚の呼び方をまとめた篇。
【釈宮】 建物に関する語についてまとめた篇。
【釈器】 器物に関する語についてまとめた篇。
【釈楽】 音楽、楽器に関する語についてまとめた篇。
【釈天】 気象・天文・暦に関する語についてまとめた篇。
【釈地】 地理に関する語についてまとめた篇。
【釈丘】 丘に関する語についてまとめた篇。
【釈山】 山に関する語についてまとめた篇。
【釈水】 河川に関する語についてまとめた篇。
【釈草】 草などについてまとめた篇。
【釈木】 木などについてまとめた篇。
【釈蟲】 昆虫などについてまとめた篇。
【釈魚】 魚についてまとめた篇。
【釈鳥】 鳥についてまとめた篇。
【釈獸】 野生の動物についてまとめた篇。
【釈畜】 家畜となる動物についてまとめた篇。

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