神様って何? その1(自然信仰)

これまでの神道での整理の中では、日本の神様は人格化されていないため、仏教のように具体的な名前や姿形があまり意識されないままに至っているということを説明してきました。
しかし、そうはいっても古神道においても、古事記や日本書紀における日本神話の神道においても、神様は存在していますので、そこを無視する訳にはいきません。
今回は、そういった日本の伝統的な神様達を少し整理してみたいと思います。
まずは、自然信仰の中に息づいている、自然の中に隠れて私達を見守ってくれているとされる神様達です。
その土地々で呼び方が異なるものも多々あるとは思いますが、まずは代表的なものをざっと整理したおきたい思います。

1、地域、土地に関わる神様

【氏神】
先の”神道 日本の伝統と倫理観”の中でも説明しました、土地神としての神様です。
もともとは氏族の祖先神ないしその守護神ということでしたが、今では”氏子”と合わせて村・地域の神という位置付けの方が強いです。

【鎮守神】
一定の寺院や地域、領域、王城、荘園などの守護神としての働きをもっていました。
その地域に住む村人および村の守護、鎮守様という役割を持っています。
代表的なところでいうと、奈良の興福寺、春日明神などがあります。

【産土神(うぶすなかみ)】
”うぶ”に産という字が宛てられていますが、要は出産などを例にするように生み出すものとか土地の生産神としてのという性格をもっていたものです。
やがて、氏神は鎮守神と融合したり、土地の神である産土神と氏神が融合したりして、これらは今ではあまり区別がなされなくなってきてはいます。

【土地神】
土地、地域を守護する神のことで地主神とか地の神としての働きをもっています。
今でも家や社を建てたりする際に、開墾の許可を貰う儀式を執り行われているときなどに目に触れるものです。
【道祖神】
道に関わることを司取る役割をもっているものです。
猿田彦やお地蔵様が祀られたりすることで身近に感じることが出来る神様でもあります。

2、家、屋敷に関わる神様

【家神】
家を守り、福をもたらす神でして、神棚に祀られる神様がこれにあたります。

【子安神】
安産、養育に関わる神様です。
神仏習合の結果、子安地蔵や子安観音などがそれにあたります。

【火の神】
火伏せを司り、火を統制する神様で、主には火事除けの役割を持っています。
秋葉神社や愛宕神社などがそれにあたり、今でも街中に小さな祠となって祭られているのを目にすることができます。

3、生活に関わる神

【山神】
山の民にとっての山の獲物をもたらしてくれる神様であり、山の中での仕事・生活を守ってくれる役割を持っています。
山の自然力を表すものでもあり、昔はこの神(山)にまつわるタブー(女人禁制など)というものも厳しいものがありました。
また山の神は醜いため、自分より醜いものを見ると喜ぶことからオコゼが捧げられるとも言われています。

【水神】
水に関わることを司る神様であり、水を配る神として水源地や分水嶺に祀られる水分神などがこれにあたります。
日常の中では、井戸や泉,池、湖などに祀られており、往々にして蛇の姿にイメージされているため、そこから竜と結びついて龍神となり、民話・伝承などでも馴染みのある形で残っています。

【田神】
山神が里に降りてきて田神になるとされており、これも田畑の豊作をもたらしてくれるための役割を担っています。
春や秋の祭りで奉納されるシンボルともなっています。

【市神】
幸をもたらすものとしての役割を担っており、代表的な神様としては恵比寿様や大黒様がそれにあたります。
丸い自然石がご神体として位置付けられることが多く、交易や市のたつ村境、四つ辻などにおかれる習慣もあったそうです。

【海神】
漁業、海の安全、航海の神様としての役割を担っています。
四国の金比羅様が有名ですが、ここも龍神と同じように蛇の姿にイメージされています。

4、七福神(招福の神)
七福神自体、中国やインドの神が主体でして、招福の神々として広く信仰されてきています。

The_seven_gods

【恵比寿様】
幸いをもたらす神様の代表でして、釣り竿を持って鯛を抱えた姿から漁民にとっては大漁をもたらす神様とされてきました。
ここから、広義の意味に捉えられ、招福の神、商売の神、農業の神として発展しています。

【大黒様】
こちらも招福の代表的な神様ですが、元来インド・シバ神の化身で破壊、戦闘の神だったものが、やがて柔和な福の神へと変貌してきました。
右手に打ち出の小槌を持ち、袋を背負い、俵の上に乗っている姿で有名で、大国がダイコクと読めることから、時に大国主と同一視されることもあるようです。

【毘沙門天】
護教・護国の神様ですが、仏教の四天王の一人である多聞天が独立的に扱われたものです。

【福禄寿】
寿老人と同一視されていることもあり、長寿をもたらす神様として有名です。
中国の道教に由来し、長寿を司る南極星の化身とされています。

【弁天様】
弁財天ともいい、もともとは水の神ですが、音楽と弁舌、知恵の神様として有名です。

【布袋様】
中国の実在の僧侶であり、その円満な顔立ちからどういう訳か七福神に加えられています。

【吉祥天】
インドの美や幸福、富を司る女神で、福をもたらす神様として有名です。
仏教に取り入れられてからは、毘沙門天の妻という位置付けになっています。

5、自然現象の神

【雷神】
雷からおそれの対象となり、やがて御霊信仰と結び付いて”天神様として祀られてきています。
稲妻から稲作との関連があるとも言われていますが、雷が雨をもたらすことから起因しているものと思われます。

【風神】
台風などの災害をもたらすことから、こちらもおそれの対象となり、これを鎮める対象として祀られてきています。
天候の兆候を与えるものとして農業との関わりで信仰されてきておりますが、神風という扱いから、幸いをもたらすとも信じられてきていたようです。

以上が、自然信仰の中に息づいている、自然の中に隠れて私達を見守ってくれているとされる代表的な神様達です。
これ以外にも挙げきれない程数多の神様がいるのですが、いずれも家や土地、地域を中心にその繁栄・守護の役割を担っていることが共通しています。
特徴的なのは、個人の利益や働きに関わる神様というものはおらず、その役割もやや曖昧で人々の繁栄・守護の願いがあるところに居る、ということが言えます。
そのため、神様自体が人格化されることがなく、その名前も地方的なものに限定されがちな特性を持っていたことが伺えます。

次回は、神社信仰における神様を整理してみたいと思います。

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