人類の歴史に大きな影響を齎した本で、古代から現代までの知の饗宴を楽しみましょ その6

”古代から現代までの知の饗宴。
 孔子、プラトンからアインシュタイン、ケインズまで、人類の歴史に大きな影響をもたらした世界の名著100冊を、縦横無尽に論じた驚嘆のブックガイド。”
といううたい文句を冠に沿えた、「人類の歴史に大きな影響を与えた」という観点でマーティン・セイモア・スミスが選んだ人文学の入門ガイド本『世界を変えた100冊』。
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ここでは、マーティン・セイモア・スミスが選んだそれぞれの本について触れてみたいと思います。
今回は、その第六弾。

51 The Principles of Human Knowledge – George Berkeley 1710
ジョージ・バークリー著、理想主義者的形而上学

本書はイギリス経験論のロックの学説を発展させ、主観的観念論の立場から対象を知覚する方法について研究し、主体的な人間にとっての認識能力の問題を提起している哲学書。
バークリーは精神に関連する知識の対象は観念ではなく概念(notion)として存在しうると捉えている。
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52 The New Science – Giambattista Vico 1731
ジャンバッティスタ・ヴィーコ著、新しい学

「諸国民の世界もしくは国家制度的世界は人間たちによって作られてきたのだから、その諸原理はわたしたち人間の知性自体の諸様態のうちに見いだすことができる」と主張し、人文学の分野に〈コペルニクス的転回〉をもたらした主著。
デカルト、ホッブス、スピノザ等に対する批判と同時に、ヴィーコの世界史とでもいう内容でもあり、また彼の思想の原理原則をスピノザのエチカ風に記述している。
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53 A Treatise of Human Nature – David Hume 1739
デイヴィッド・ヒューム著、人間本性論

経験と観察に基づく〈人間の学〉を目指し、観念・記憶・想像・感覚・印象・信念・習慣・人格の同一性等々広範な精神領域を考察する、イギリス経験論哲学の最高峰の著書。
人間の営みの柱をなす科学や道徳が理性に基づかないことを徹底的に示し、刊行時には危険思想とされ激しい批判を浴びたが、250年以上を経た現在もなお、その哲学的意義を思考される古典中の古典。
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54 The Encyclopedia – Denis Diderot 1752
ドゥニ・ディドロ著、百科全書

フランス革命の発生に多大の影響を与えたといわれる十八世紀の啓蒙思想家たちが、アンシャン・レジームのなかで三十年の歳月をかけて完成した百科全書。
1751年から1772年までに全28巻(本文17巻、図版11巻、その後補巻・索引が作られた)が刊行され、本文の巻の総ページ数16142ページ、項目数は71709となる近代的知識の集大成であり、同時代の類書を圧倒して思想史上に不朽の名を残した。
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55 A Dictionary of the English Language – Samuel Johnson 1755
サミュエル・ジョンソン著、英語辞典

詩人、作家、翻訳家であり、批評家、政治評論家、書誌学者、歴史家・・・多岐にわたる才能をそなえたジョンソンがそれらの知の技法を結集させた『英語辞典』。
40,000を超える語を収め、単語の意味を説明するために、シェークスピア、ミルトンなどの著名な作家の作品の引用を用いている点が大きな特長。
その引用の数は114,000件にものぼると言われ、「引用」を辞書に取り入れるという手法は、後世の辞書の編纂にも大きな影響を与えた。
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56 Candide – Francois-Marie de Voltaire 1759
ヴォルテール著、カンディード(最善説)

1759年に発表されたフランスの啓蒙思想家ヴォルテールによるピカレスク小説。
「この最善なる可能世界においては、あらゆる物事はみな最善である」
この命題が、あらゆる不幸が襲いかかる一連の冒険を通じて、主人公カンディードがたどりつく結末で、劇的に論駁され、ゴットフリート・ライプニッツ哲学を風刺し、18世紀の世界に存在した恐怖を陳列した小説となっている。
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56+ Elements of Chemistry – Antoine Lavoisier 1775
アントン・ラヴォアジェ、化学要綱(Elements of Chemistry)

液体の拡散を研究して非拡散物質を〈コロイド〉と命名、透析法を考案してコロイドとクリスタロイドを分離し、コロイド化学への道を開いた。
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57 Common Sense – Thomas Paine 1776
トマス・ペイン著、コモン・センス(常識)

1776年1月よりトマス・ペインによって発行されたパンフレットで、人々の「常識」に訴える平易な英文で合衆国独立の必要性を説き、合衆国独立への世論を強めさせた。
イギリス政治の君主政・貴族政(貴族院・庶民院の二院制議会に立脚)的な要素を批判し、イギリス王政の起源をノルマン・コンクェストに求め、人民の支持なき王の「神聖性」を否定しようとした。
また、イギリス経済からの離脱が経済に悪影響を与えるとの懸念に対し、独立によって自由貿易を採用すればより合衆国経済は繁栄すると説いた。
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58 An Enquiry Into the Nature and Causes of the Wealth of Nations – Adam Smith 1776
アダム・スミス著、諸国民の富の性質と原因の研究(国富論)

全五篇が経済学の理論書であり、その一部のみを経済学の理論として位置づけることは誤りである。
本書の第一編第一章から第三章では、分業の発展が解説されており、第十章第二節では、 封建制の終焉に関する理解を促している。
この書は歴史書ではなく、普遍性を持った理論書であるので、その内容の一部の新旧をもって判断する書物ではない。
現代の読者にとって古典派経済学(classical economics)の比較的理解しやすい入門としての古典として読み継がれている。
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59 The History of the Decline and Fall of the Roman Empire – Edward Gibbon 1782
エドワード・ギボン著、ローマ帝国衰亡史

古代ローマ帝国の衰亡を記述した歴史書の古典大作。
五賢帝時代(96年より180年)における古代ローマ帝国の最盛期から始まり、ローマ帝国の東西分裂、ユスティニアヌス1世によるローマ帝国再興の試み、勃興するイスラーム勢力との抗争、十字軍などを描き、オスマン帝国によるコンスタンティノープル陥落(1453年)によって帝国が滅亡するまでを記している。
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60 Critique of Pure Reason – Immanuel Kant 1781
イマヌエル カント著、純粋理性批判

理性認識の能力とその適用の妥当性を、「理性の法廷」において、理性自身が審理し批判する構造を持っている。
すなわち「認識する」とされる理性そのものは、理性からは認識できる範囲外にあることを原点とした。
経験は経験以上のことを知りえず、原理は原理に含まれること以上を知りえない。カントは、理性が関連する原則の起源を、経験に先立つアプリオリな認識として、経験に基づかずに成立し、かつ経験のアプリオリな制約である、超越論的 (transzendental) な認識形式に求め、それによって認識理性 (theoretische Vernunft) の原理を明らかにすることに努めたのである。
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