This is ” KABUKI ” ( ノ゚Д゚) もっと歌舞伎を楽しもう!(16) 時代物『女暫』

歌舞伎は世界に誇る、日本の伝統芸能です。
しかし、元々400年前に登場したときには、大衆を喜ばせるための一大エンターテイメントだったのです。
なんとなく難しそうなので、ということで敬遠されている方も多いのかもしれませんが、そもそもは庶民の娯楽だったもの。
一度観てみれば、華やかで心ときめく驚きと感動の世界が広がっているのです。
しかも歌舞伎は、単に400年もの間、ただただ伝統を受け継いできただけではありません。
時代に呼応して常に変化し、発展・進化してきているのです。

This is ” KABUKI ” ( ノ゚Д゚) もっと歌舞伎を楽しもう!(4) 演目の分類と一覧について
前回は歌舞伎の演目をざっと整理してみましたので、ここからは具体的な演目の内容について触れてみましょう。

以前に、歌舞伎十八番の「暫」を紹介しました(”This is ” KABUKI ” ( ノ゚Д゚) もっと歌舞伎を楽しもう!(10) 歌舞伎十八番『暫』”)が、今回はその変形版『女暫』です。

『暫』の主人公を女に替えたもので、強力無双の主人公・座頭級の女方によって演じられる時代物です。
圧倒的な強さで悪人をやっつける荒事でありながら女であることを忘れずにつとめることが要点で、聞かせどころのツラネの最後に「おお恥ずかし」と付け加えるなどの工夫があるものです。
で、『暫』とほぼ同じなのに何故わざわざ『女暫』としたのかといいますと、観劇上の非常に重要な注意点があり、その部分を見逃すとこのお芝居は意味がないというポイントを持っています。

『女暫』

源平の戦の後。
頼朝、義経の異母弟にあたる樺冠者範頼(源範頼)が、家来を連れて宴会をしています。
源範頼は、源平の戦で戦功があったので官職を受けて有頂天になり、天下を取ろうという野望を抱きはじめています。
善人側で常識人の清水冠者義高や木曽次郎が「いいかげんにしろ」といさめますが聞きません。
しかも、範頼は、善人方の義高が朝廷からあずかった宝剣「倶利伽羅丸」を奪い取ったまま。
さらに、義高には恋人・紅梅姫がいるのですが、範頼は紅梅姫をヨメにしたいものの承服しません。
怒った範頼は家来の成田五郎に、一同の首を斬ってしまえと命じます。

絶体絶命の瞬間、「しばらく」と花道の奥から声がして、キリリとした美女・巴御前が出て来ます。
源平の戦の発端の頃に暴れた木曽義仲の恋人が巴御前です。
さて、巴御前が名前を名乗るとき、ツラネ(連ね)で語ります。
強そうなおねえさんが花道に陣取って、善人たちに手出しできないようににらんでいるので困った範頼の手下たち、と順番に出て行っては巴御前をどかそうとします。
おどしたり、なだめたり、頼んだり、攻撃したりですが、巴御前はびくともしません。
代わる代わる出てくる悪人側の戦力が、どれもまったく相手にならない、主人公との圧倒的な力の差が出てしまいます。
彼らを蹴散らした巴御前は、本舞台にやってきて範頼に詰め寄ります。
天下を取ろうとかおこがましい、宝剣返せ。
そんなこんなで宝剣を手に入れた巴は、それをもとの持ち主の義高に渡します。
巴は巨大な刀のひと太刀で範頼の兵隊たちをなで斬りにすると、意気揚々と引き上げて行きます。

終幕。

と、このこの後の花道の引っ込みの場面が重要です。

巴は女形なので、荒事の立役の役者さんが花道でやる「六法」という歩き方ができません。
なので、横にいる舞台番のひとに歩き方を習います。
歩き方を教わった巴は、りっぱな六法を踏んでのしのしと歩きますが、すぐに立ち止まって「おお恥ずかし」と言い、そのまま女性らしいかわいらしい走りかたで花道を引っ込みます。
巴ではなく、かわいらしい女形の役者さんに戻った瞬間でもあります。
ここまでの堂々とした男顔負けの美丈夫ぶりと、最後の最後でのかわいらしいしぐさとの対比こそが、この舞台の最大の見どころです。

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