前回、”エジプトの百姓とその色白き子供たち”からの続きです。
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昔、バグダードにカリーフという貧しく下品な漁師がいた。
ある日、川で網を打つと、水の中から片目でみすぼらしい猿が獲れた。
再び網を打つと、今度は美しい雌猿が獲れた。
みすぼらしい猿はカリーフの運命を表す猿で、美しい雌猿は裕福なユダヤ人両替商アブー・サアーダの運命を表す猿であった。
雌猿に言われて3度目の網を打つと、今度は見事な魚が取れた。
雌猿はカリーフに、その魚をアブー・サアーダの所に持って行き、魚を渡すのと引き換えに「私の猿とカリーフの猿を交換する」とアブー・サアーダに言わせるよう言った。
カリーフはその通り行い、川に戻って来て網を打つと、今度は大量の魚が取れ、丁度そこに大勢の人が通りかかり、魚はたちまち売れて、カリーフは100ディナールを儲けた。
カリーフはお金の隠し場所に困り、袋に入れて首からかけていたが、網を打った拍子に川に落としてしまい、服を脱いで水の中を探したが見つからず、岸に上がると、脱いだ服がなくなっていた。
一方、御用商人の宝石商イブン・アル・キルナスは、「心の力」と言う名の女奴隷を買い、教王(カリーファ)ハールーン・アル・ラシードに献上したところ、教王は非常に気に入り、1万ディナールで買取り、その日以来、政務も忘れ、誰にも会わず、「心の力」との楽しみだけに没頭してしまった。
大臣ジャアファル・アル・バルマキーは政務が滞ることを心配し、金曜日の礼拝に教王が出てきた時に話しかけ、散歩に誘い出した。
丁度、教王が散歩で川辺に来たとき、服をなくしたカリーフに出会った。
カリーフは教王を服泥棒と思い、服を返すようやかましく言ったので、教王は自分が着ている宝石のちりばめられた上着をカリーフに与えた。
さらに、カリーフは教王に漁を手伝うように言い、教王が網を打つと、大量の魚が取れた。
カリーフは教王に大きな籠を2つ持ってくるように言ったが、その機に教王は逃げ、ジャアファルに再会し、お供の宦官たちにカリーフの魚を持ってきたものには一匹に1ディナール与えると言ったので、宦官たちは争ってカリーフのところに行き、魚をほとんど奪って戻ってきた。
しかし、宦官長のサンダールは出遅れたため遅く着き、最後に残った2匹の魚を買い取り、手持ちの金がなかったので翌日宮殿に取りに来るようカリーフに言った。
その一方、教王が散歩で留守中、教王の正后ゾバイダは「心の力」を妬み、「心の力」を騙して宴に誘い、料理に麻酔薬を混ぜて飲ませ、麻酔にかかった「心の力」を箱に詰めて、宮殿の外で箱の中身が分からないまま競売に掛けて売り払うよう指示し、宮殿内では「心の力」が死んだとふれさせて、葬式を行い、墓を建てた。
散歩から帰った教王は「心の力」が死んだと聞いて、塞ぎ込んでしまった。
翌日、カリーフは宦官長サンダールを訪ね宮殿に来たが、教王に呼ばれて謁見の間に通された。
教王はアッラーが定めたカリーフの運命を見ようと、20枚の紙に教王位、王族位、大臣位、1000ディナール、1ディナールなどと書き、もう20枚の紙に絞首刑、投獄、棒打ちなどと書き、金の壷に入れてカリーフに引かせた。
カリーフは100回棒打ちの紙を引いたので、100回棒で打たれた。
大臣ジャアファルは気の毒に思い、再度引かせるが、くじを見たジャアファルは、紙には何も書かれていないと言った。
3度目のくじを引くと、1ディナールと出たので、カリーフは1ディナールを与えられて部屋から出された。
そこに宦官長サンダールが現れ、昨日の魚の代金として100ディナールをカリーフは受け取った。
カリーフが宮殿を出ると、丁度「心の力」が入れられた箱が競売に掛けられていた。
カリーフは勢いで101ディナールで箱を競り落とした。
荷担ぎ人足ゾライクは頼まれもしないのに箱を担いでカリーフの家まで一緒に行ったが、金がないので何ももらえなかった。
カリーフが箱を開けると、「心の力」が出て来た。
「心の力」は宝石商イブン・アル・キルナスに手紙を書いて資金を用立ててもらい、カリーフを風呂屋に行かせ、美しい服を与え、礼儀作法と上品な言葉使いを教え、新しい住居を用意した。
カリーフは教王に謁見を求め、上品になったカリーフの変貌に驚いている教王に、新居への訪問を願い出た。
新居に来た教王は「心の力」と再会し、非常に喜び、カリーフを地方の太守に任命し、「心の力」が選んだ美しい乙女を妻として与え、宴席の友とされた。
カリーフたちは教王の庇護のもと幸せに暮らした。
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次回は、 ハサン・アル・バスリの冒険です。