人類の歴史に大きな影響を齎した本で、古代から現代までの知の饗宴を楽しみましょ その7

”古代から現代までの知の饗宴。
 孔子、プラトンからアインシュタイン、ケインズまで、人類の歴史に大きな影響をもたらした世界の名著100冊を、縦横無尽に論じた驚嘆のブックガイド。”
といううたい文句を冠に沿えた、「人類の歴史に大きな影響を与えた」という観点でマーティン・セイモア・スミスが選んだ人文学の入門ガイド本『世界を変えた100冊』。
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ここでは、マーティン・セイモア・スミスが選んだそれぞれの本について触れてみたいと思います。
今回は、その第七弾。

61 Confessions – Jean-Jacques Rousseau 1766
ジャン・ジャック・ルソー著、告白
「わたしはかつて例のなかった、そして今後も模倣する者はないと思う、仕事をくわだてる。自分と同じ人間仲間に、ひとりの人間をその自然のままの真実において見せてやりたい。そして、その人間というのは、わたしである」
こんな書き出しで始まる「告白」は、無数の「自叙伝」のうちで最も傑出した作品といわれる。
主権在民や平等思想など近代社会思想の先駆者であり、フランス革命の父であるルソーのこの作品は、近代小説の先駆ともなった。
偉大であると同時に奇矯、弱々しいと同時に尊大、矛盾に満ちながら、しかも誠実に生き抜いた人物を生き生きと描いた傑作である。
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62 Reflections on the Revolution in France – Edmund Burke 1790
エドマンド・バークフランス著、革命の省察
フランス革命への批判がなされており、保守主義の聖典、反革命の福音書とされる。
「時効の憲法」などバーク哲学の主要概念が述べられており、文明社会・法の支配・伝統・慣習・相続・世襲制度・偏見、教会などの中間組織、私有財産権の擁護が主張されており、それらを破壊するフランス革命への非難がなされている。
また理性主義・平等主義・民主主義などへの反駁もなされている。
後半では革命が今後たどるであろう経緯を予測しており、終わりの部分では、「最終的落着を見る前にフランスは火と血によって浄化されるべき転生を通り抜けなければならない」と述べられている。
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63 Vindication of the Rights of Women – Mary Wollstonecraft 1792
メアリ・ウルストンクラフト著、女性の権利の擁護
これまで男性が女性に対して向けてきた愛情の正体が低級なものであり、それは男性が女性の知的な向上を妨げてきたためであったと論じる。
自分の生活を男性に依存させるような女性の弱さは、その場限りで短期的な愛着を生み出すに過ぎないと指摘する。
彼女は男性と女性が互いに助け合うことが重要であり、男性が女性の知的発展を妨げれば女性は男性を堕落させるとして女性を解放する意義を主張する。
女性を解放するために必要なものは教育であり、ウルストンクラフトは女性に与えられてしかるべき知識や徳目を列挙することで、従来の国民教育の内容と制度の改革についての理解を求めている。
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64 An Enquiry Concerning Political Justice – William Godwin 1793
ウィリアム・ゴドウィン著、政治的正義(財産論)
フランス革命に触発されて主著『政治的正義』を書き,政府と私有的財産を否定する平等主義を主張し,世界最初の無政府主義者とも言われる。
本書を批判したマルサスの「人口論」に対する反批判として「人口論」(Of population, 1820)を書いている。
「女性解放の開祖」と言われるメアリー・ウルンストンクラフトは彼の妻であり、小説『フランケンシュタイン』の作者メアリ・シェリーは彼の娘である。
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65 An Essay on the Principle of Population – Thomas Robert Malthus 1798
マルサス著、人口論
まず基本的な二個の自明である前提を置くことから始める。
・第一に食糧(生活資源)が人類の生存に必要である。
・第二に異性間の情欲は必ず存在する。
この二つの前提から導き出される考察として、マルサスは人口の増加が生活資源を生産する土地の能力よりも不等に大きいと主張し、人口は制限されなければ幾何級数的に増加するが生活資源は算術級数的にしか増加しない、という命題を示す。
次に、このような人口の飛躍的な増加に対する制限が、生活資源の継続的な不足をもたらし、重大な貧困問題に直面することになると考察している。
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66 Phenomenology of Spirit – George Wilhelm Friedrich Hegel 1807
ヘーゲル著、精神現象学
観念論の立場にたって意識から出発し、弁証法によって次々と発展を続けることによって現象の背後にある物自体を認識し、主観と客観が統合された絶対的精神になるまでの過程を段階的に記述したもの。
カントの認識と物自体との不一致という思想を超克し、ドイツ観念論の先行者であるフィヒテ、シェリングも批判した上で、ヘーゲル独自の理論を打ち立てた初めての著書である。
難解をもって知られ、多くの哲学者に影響を与えた。
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66+ A new system of chemical philosophy – John Dalton 1808
ジョン・ドルトン著、化学の新体系
ドルトンは、1803年に原子の概念と、化合物に適用した倍数比例の法則を講演で公表し、その内容を本著で示している。
「化学の新体系」第1部の第3章は、「化学合成について」であり、そこで有名な元素記号の表と図が登場します。
その後に色々な実験で、彼の理論が証明されて原子説が理論的根拠と言われるようになりました。
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67 The World as Will and Idea – Arthur Schopenhauer 1819
アルトゥール・ショーペンハウアー著、意志と表象としての世界
世界はわたしの表象であるという「表象としての世界の第一考察」
世界は主観によって制約された客観としてはわたしの表象であるという「意志としての世界の第一考察」
表象において範型として表現された意志・イデア (Idee)であると位置づけている「表象としての世界の第二考察」
おのれを自由に肯定したり、あるいは自由に否定する生きようとする「意志としての世界の第二考察」
についての考察を行った著書である。
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68 Course in the Positivist Philosophy – Auguste Comte 1826
オーギュスト・コント著、実証哲学講義
『実証哲学』は社会学を含めたさまざまな学問を体系化するものである。
そこでは三段階の法則として、あらゆる概念や知識が三つの段階を経ることを論じている。
人間の精神はこれまで神学的段階、形而上学的段階を経て実証的段階となり、これら段階はそれぞれ特徴的な思考様式を持っているとした。
社会発展についてコントは神学的段階では社会は軍事的段階にあり、形而上学的段階では法律的段階、実証的段階では産業的段階にあると考えていた。
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69 On War – Carl Marie von Clausewitz 1832
カール・フォン クラウゼヴィッツ著、戦争論
本書は戦争の暴力性や形態を決める重要な要因として政治を位置づけたものであり、軍事戦略を主題とする最も重要な論文のひとつとして、今日でも各国の士官学校や研究機関で扱われている。
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70 Either-Or – Soren Kierkegaard 1843
セーレン・キェルケゴール著、あれか、これか
キルケゴールはドイツ観念論の哲学者「ヘーゲル」から大いに影響を受けている。
キルケゴールを理解する上で必要な概念である「弁証法」もヘーゲルが重視していた。
しかし、ヘーゲルの弁証法は体系重視であり、いわば、「あれもこれも」となんでも含んで膨らんでいく弁証法であったのに対し、キルケゴールの実存の弁証法は「あれかこれか」、どちらも、ではなくどちらかの決死の選択の上でなされる単独的なものである。
体系の哲学者として、ヘーゲルや「カール・マルクス」(共産主義者)がいるが、彼らのアンチテーゼとして存在するのがまさしく、キルケゴールなのである。
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