歌舞伎は世界に誇る、日本の伝統芸能です。
しかし、元々400年前に登場したときには、大衆を喜ばせるための一大エンターテイメントだったのです。
なんとなく難しそうなので、ということで敬遠されている方も多いのかもしれませんが、そもそもは庶民の娯楽だったもの。
一度観てみれば、華やかで心ときめく驚きと感動の世界が広がっているのです。
しかも歌舞伎は、単に400年もの間、ただただ伝統を受け継いできただけではありません。
時代に呼応して常に変化し、発展・進化してきているのです。
This is ” KABUKI ” ( ノ゚Д゚) もっと歌舞伎を楽しもう!(4) 演目の分類と一覧について
前回は歌舞伎の演目をざっと整理してみましたので、ここからは具体的な演目の内容について触れてみましょう。
今回は、「世話物」の中から『花街模様薊色縫』です。
『花街模様薊色縫』は通称『十六夜清心』と呼ばれ、極楽寺の僧清心と遊女十六夜の変転を描いた河竹黙阿弥作の全四幕からなる「世話物」です。
物語は文化二年 (1805) に打ち首獄門になった実在の大盗賊・鬼坊主清吉を主人公に、安政二年 (1856) に起った藤岡藤十郎の御金蔵破り事件や、講談で知られた剣客八重垣紋三の御家騒動を題材にとり、これに当時話題となったや寛永寺の僧侶と遊女の心中事件や初春恒例の曾我兄弟の対面を付け加えてないまぜにしたもので、今日では清吉とその情婦・十六夜にかかわる部分のみが『花街模様薊色縫』の外題で上演されています。
清心は、十六夜に対する女犯の罪で寺を追放され、一方の十六夜は、清心の子を身ごもったことを知り、廓を抜け出します。
稲瀬川のほとりで出会った2人は、川に身を投げて心中しますが、2人とも死ぬことはできず、別々に命を永らえます。
清心は、はずみで人を殺したことにより悪に目覚め、また十六夜は助けてくれた白蓮の妾となります。
その後2人は箱根の山中で再会し、鬼薊の清吉とおさよという盗賊となって、白蓮を強請にいきます。
現在では、2人が心中をする「稲瀬川百本杭の場」から、互いに一命を取りとめたことを知らずにすれ違う「百本杭川下の場」までが、たびたび上演されています。
『花街模様薊色縫』
第一幕 稲瀬川の場
鎌倉極楽寺に賊が入り、頼朝公寄進の金子三千両が失われる。
捜査の過程で、金子管理の役僧清心坊が扇屋の女郎十六夜と関係しているのが発覚し、清心は鎌倉を追放される。
あてもなく稲瀬川百本杭を歩く清心に店を抜け出てきた十六夜が追いつき、二人は世をはかなんで川に身を投げる。
清心は死にきれず、通りかかった寺塚求女が癪で苦しむのを介抱する内、百両の大金を所持している事を知り求女を殺して金を奪い盗賊となる。
求女が恋人十六夜の弟、百両が清心への選別とは気付かずに。
一方十六夜は白魚を採っていた俳諧師白蓮に救われる。
第二幕 初瀬小路妾宅の場
白蓮の妾となっておさよとなった十六夜であったが、清心を死んだと思いこみ毎日位牌を拝んでいる。
その貞節に感じ入った白蓮はおさよに暇をやり、出家させる。
おさよは父西心ともども巡礼の旅に出る。
地獄谷山神祠の場
おさよは悪人に連れ去られ、女盗賊の地獄婆お谷の子分・十六夜おさよとなるが、箱根の山中で偶然清心に出会う。
清心もまた、鬼薊清吉と名乗る盗賊に墜ちていた(世話だんまりで有名な一場)。
第三幕 雪ノ下白蓮宅の場
清吉とおさよは夫婦揃っての悪党になり、連れ立って白蓮の家に強請りに行く。
白蓮が手切れ金に渡した小判の包み紙に清吉が極楽寺の役僧のときに押した刻印があるのがわかり、清吉夫婦は図に乗って恐喝するが、実は白蓮こそ天下の大泥棒大寺正兵衛であり、しかも清吉が幼い時に生き別れた実の兄であることが分かる。
思わぬ因縁に驚く三人であったが白蓮の下男に変装していた役人寺澤搭十郎に知れる事となり、捕り手に囲まれる。
白蓮実は正兵衛の女房はわざと夫に手に係り死ぬ。
清吉、おさよ、正兵衛の三人は捕り手の包囲を脱して逃げさる。
第四幕 名越 無縁寺の場
清吉とおさよは幼いわが子とともに、おさよの父西心の庵室に潜伏している。
清吉は知らぬこととはいえ自分がおさよの弟を殺した事実を知り、涙ながらにおさよに告白する。
狂ったように泣くおさよ。
二人は自殺しよう争うはずみに、あやまって清吉はおさよを殺してしまう。
清吉もかけつけた西心と正兵衛にわが子の将来を托し自害する。
正兵衛は棺桶に隠れて脱走しようとするが捕らえられる。