【千夜一夜物語】(40) ザイン・アル・マワシフの恋(第653夜 – 第666夜)

前回、”眼を覚ました永眠の男の物語”からの続きです。

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昔、大金持ちの美しい青年でアニスという名の者が歩いていると、大きな屋敷から美しい女の声が聞こえて来た。
中に入ると、4人の美しい召使の女に囲まれてひときわ美しい14歳ぐらいの乙女がいた。
乙女はザイン・アル・マワシフと言い、侵入者に驚くが、アニスを将棋に誘った。
アニスがザイン・アル・マワシフに見とれ、将棋に集中しないので、ザイン・アル・マワシフは本気にさせるため全財産を掛けて将棋を指すことにするが、やはりアニスは見とれて負けてしまった。
ザイン・アル・マワシフは全財産はいらないと言うが、アニスは負けた以上全財産はあなたのものだと言い、法官(カーディー)を呼び証書を作った。

そこで、ザイン・アル・マワシフはアニスに「麝香4袋と、龍涎香4オンスと、金襴4000反と、牝騾馬4頭を持ってきて欲しい。」と頼み、アニスは「友人がいるので、頼めば用立てられます。」と言って出て行った。
ザイン・アル・マワシフは女召使のフーブーブに、全財産を失ったアニスが友人に頼んでも友人は聞かないだろうから、全ての友人に断られたらここに連れてくるように言い、アニスの後をつけさせた。
アニスは全ての友人に断られ、ザイン・アル・マワシフの元に帰ったが、ザイン・アル・マワシフはアニスに全財産を返し、寝室に入り愛し合った。

ザイン・アル・マワシフは実はユダヤ人で人妻で、夫に知られないようにアニスと密会を重ねたが、ついに夫に知られてしまった。
夫は妻とアニスを引き離すため、妻を連れて商売の旅に出発した。
夫は妻を鞭打ち、蹄鉄屋のところに連れて行き、ザイン・アル・マワシフに蹄鉄を打つよう頼んだ。
蹄鉄屋は驚き、奉行に通報した。
ザイン・アル・マワシフは、自分はイスラム教徒で、このユダヤ人に誘拐され虐待されていると嘘を言い、4人の女召使フーブーブ、クートゥーブ、スークーブ、ルークーブもザイン・アル・マワシフの嘘に同調した。
ユダヤ人の夫は本当のことを言っても信じてもらえず、終生入牢となった。

ザイン・アル・マワシフは帰る途中、キリスト教の教会の前を通ったが、修道士が「夜は盗賊が出るので危険だから泊まって行きなさい」と言うので、泊まることにした。
修道士たちはザイン・アル・マワシフを襲おうとしたが、ザイン・アル・マワシフと4人の女召使は逃げ出し難を逃れた。
ザイン・アル・マワシフは屋敷に帰り、アニスと再会し、幸せに暮らした。

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次回は、 不精な若者の物語です。

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