【千夜一夜物語】(4) 斬られた女と三つの林檎と黒人リハンとの物語(第19夜 – 第24夜)

前回、”荷かつぎ人足と乙女たちとの物語”からの続きです。

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教王(カリーファ)ハールーン・アル・ラシードがお忍びで、大臣ジャアファル・アル・バルマキーと御佩刀持ちマスルールを従えバグダードの町を歩いていると、漁師に出会ったので、金を与え網を打たせると、若い女の死体が入った箱がかかった。
教王はジャアファルに3日以内に殺人犯を捕らえないと、代わりにジャアファルを死刑にすると告げた。
犯人は見つからず、ジャアファルが死刑になろうとしたとき、若い男が自首し、次に老人が自首した。

若い男は殺された女の夫で、老人は殺された女の父であった。
ある日、病気がちの妻が「林檎が欲しい」と言ったので、若い男はバグダッドの町中を探したが、林檎はなく、遠くバスラの町の教王の果樹園まで旅して園丁から林檎を3個分けてもらって帰ったが、妻は結局林檎を食べなかった。
若い男が町を歩いていると、黒人が林檎を持っていたので、聞くと「愛人からもらった」と言ったので、妻が浮気したと思い、逆上して妻を殺してしまった。
しかし、その林檎は取られたものだと分かって後悔し、妻の父に告白するが、妻の父は男に同情し、男が自首したことを聞き、身代わりに自首したというものであった。

教王は話を聞き、両者に同情して罪を赦し、ジャアファルに3日以内に黒人を見つけなければジャアファルを代わりに死刑にすると告げた。
3日後、ジャアファルは自分の娘が家の黒人奴隷リハンから林檎を買ったことを知り、リハンを捕らえ教王に差し出すが、「大臣ヌーレディンとその兄大臣シャムセディンとハサン・パドレディンの物語」をするのでリハンを赦すことを願い出、願いは許可された。

【大臣ヌーレディンとその兄大臣シャムセディンとハサン・パドレディンの物語】

昔メスル(エジプトのカイロ)の国に、美男の兄弟の大臣、兄シャムセディンと弟ヌーレディンがいた。
二人はある日「もし同じ日に結婚し、同じ日に子供が産まれ、シャムセディンの子が女で、ヌーレディンの子が男なら結婚させよう」と話し合ったが、その際の結資の額について喧嘩をしてしまい、ヌーレディンは町を出て放浪の旅に出た。
ヌーレディンはいくつもの町を訪ねた末バスラの町に着き、その国の老大臣に気に入られ、娘と結婚し、美しい男の子ハサン・パドレディンをもうけ、老大臣の隠居とともに大臣になり、よく政治を行った。
老大臣は間もなく亡くなったが、ヌーレディンは職に励み、ハサン・パドレディンの教育に努め、優れた学者に子を教育をさせ、ハサン・パドレディンが15歳になるまでに、学者の知識全てを吸収させた。
また、ヌーレディンの妻は、菓子の作り方をハサン・パドレディンに教えた。ハサン・パドレディンはその美貌と知識のため、国王に気に入られた。

一方、兄シャムセディンは、奇しくも、弟ヌーレディンと同じ日に豪商の娘と結婚し、ハサン・パドレディンが生まれた日と同じ日に、美しい女の子セット・エル・ホスンをもうけた。

その後すぐに、ヌーレディンは病気で死亡し、ハサン・パドレディンは悲しみのあまり国王の所に行かなくなったので、国王は怒り、ハサン・パドレディンの全財産を没収し、捕まえるよう命令する。
しかし、ハサン・パドレディンは無一文で逃げ、町の外のヌーレディンの墓に着いた。
そこにユダヤ商人が通りかかり「次に入港するヌーレディンの船を千ディナールで買う」ことを申し出、ハサン・パドレディンは同意し、千ディナールを受け取った。
やがて、ハサン・パドレディンは父の墓で眠ってしまった。

そこに、女鬼神が通りかかり、ハサン・パドレディンの美しさに感嘆する。
さらに男鬼神が通りかかり「エジプトのセット・エル・ホスンの方が美しい」と言うので、口論になり、眠っているハサン・パドレディンを連れて行って見比べようということになった。
エジプトでは、国王がセット・エル・ホスンの美しさを知り結婚を申し込むが、シャムセディンが弟ヌーレディンとの約束のため断ってしまう。
国王は腹いせに、セット・エル・ホスンをせむしと結婚させることにし、ちょうどその日は結婚式の日であった。
男鬼神はせむしを便所に監禁し、ハサン・パドレディンが代わりにセット・エル・ホスンと初夜を共にした。
2人が眠ると、鬼神たちは眠っているハサン・パドレディンをバスラまで運ぼうとするが、喧嘩をし、途中のダマスの町の城壁の外に裸のハサン・パドレディンを置き去りにした。
翌朝、眼をさました裸のハサン・パドレディンは、狂人扱いを受けるが、町の菓子屋に保護され、養子になった。

セット・エル・ホスンはハサン・パドレディンの子を出産し、その美しい男の子はアジブと名づけられた。
アジブが12歳の時、父親がいないことをからかわれたので、一家でハサン・パドレディンを探すことにし、ハサン・パドレディンが残していった服にあった書類から、バスラから来たことが分かったので、バスラを目指して旅に出た。

一行は途中ダマスに立ち寄り、アジブはお供の黒人の宦官サイードといっしょにハサン・パドレディンの菓子屋で菓子を食べるが、互いに親子であることに気づかなかった。
一行は、バスラでハサン・パドレディンの母を見つけ、いっしょにカイロまで帰ることにし、再び途中でダマスに立ち寄った。
このとき、ハサン・パドレディンの母は、菓子の味から、菓子屋がハサン・パドレディンであることに気づき、いっしょにカイロに帰り、幸せに暮らした。

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次回は、せむし男および仕立屋とキリスト教徒の仲買人と御用係とユダヤ人の医者との物語です。

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