ミケランジェロ!ルネサンス期の万能芸術家に想いを馳せて!

540年前の今日(3月6日)は、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ラファエロと並ぶ盛期ルネサンスの三大巨匠の一人、ミケランジェロ(Michelangelo di Lodovico Buonarroti Simoni)が生まれた日です。

ミケランジェロと聞くと、ピエタやダヴィデ像など素晴らしい彫刻を残しているため彫刻家としてのイメージが強いのですが、システィーナ礼拝堂の圧倒的な壁画に代表されるように画業としても偉大な業績を残していますし、また晩年にはサン・ピエトロ大聖堂の主任建築士という建築家としての才も発揮した、まさにルネサンス期の万能芸術家といっても過言ではないでしょう。

そんなミケランジェロの画家としての代表作といえば、『システィーナ礼拝堂天井画』と『最後の審判』でしょう。
CappellaSistina

『システィーナ礼拝堂天井画』(Cappella Sistina)の主題は旧約聖書の冒頭書に50章から書かれ、神による世界と人間の創造から、楽園追放、バベルの塔、ノアの箱舟などの神話的伝承と、アブラハム・イサク・ヤコブ・ヨセフらの族長伝承などから成る≪創世記≫です。
1508年に教皇ユリウス2世の注文で着工され、4年もの歳月をかけて完成された世界最大の壁画で、中央付近に描かれた「アダムの創造」は最初の人アダムに生命を吹き込み、地上の支配者という役割を与える場面が描かれ、中央の創造主とアダムの指先が触れる部分は、神の意志と生命の伝達を表すとされている超メジャーな場面ですね。

GiudizioUniversale

『最後の審判』(Giudizio Universale)の主題はその名の示すようキリストが再臨して人類を裁く教義『最後の審判』ですが、その解釈と表現には新旧の聖書のほか、ダンテの神曲やトンマーゾ・ダ・チェラーノの『怒りの日』、カトリック改革派の思想、マルティン・ルターの異教的思想など、さまざまなものが影響しています。
システィーナ礼拝堂天井画完成から24年後の1536年、教皇ユリウス2世の後に即位した教皇クレメンス7世がシスティーナ礼拝堂正面壁に壁画を描く構想を最初に練り、その意思を引き継いだ教皇パウルス3世がミケランジェロに制作を依頼し5年の歳月をかけて制作された大作です。
実際、制作当初からスキャンダラスとして批判を受け、異教的であるという理由から画家ダニエレ・ダ・ヴォルテッラに依頼し裸体で描かれていた人物に衣服が描き加えられたのを始め、最終的には44箇所に及ぶ加筆がおこなわれたと言われています。
『最後の審判』では最上部の二区分に、天使がそれぞれの受難具を運ぶ姿が描かれている。最後の審判を告げるらっぱを吹く天使たちの下では、人間の善悪のおこないが記された善行の書と悪行の書を、審判される者へ見せる天使が描かれており、最後の審判によって復活する死者の場面をミケランジェロはダンテの神曲の一節≪死者は死に、生者は生きているようだ≫を引用し表現したと云われています。

以前徳島にある大塚美術館でこれらを原寸大で複製した陶板画を見ましたが、(複製とわかっているのに)その圧倒的で壮大な場面に、美術史家のヴァザーリが「この絵はわれわれの芸術を照らす光である。この絵は闇の中にあったこの世界を照らす光となった」と書き、文豪ゲーテが「この天井をみれば、われわれ人間がどれほどのことができるかがわかる」と驚嘆した理由の一片がわかるような気がしました。
バチカンに出向いて、実物を是非とも仰ぎみてみたいものです。

そして、ミケランジェロの彫刻家としての代表作といえば、『 ピエタ』と『ダヴィデ像』、そして『瀕死の奴隷』でしょう。
Pieta

キリストとその死を嘆く聖母マリアの姿を指す、彫刻家ミケランジェロ初期の傑作『ピエタ』(Pieta)。
公開当時より圧倒的な支持を受け、ミケランジェロはこのピエタの成功により名声を得て、芸術家としての地位を不動のものとするきっかけとなったといわれています。

David

全イスラエルを統一し、エルサレムに都を定め、近隣諸国の征服併合をおこなった紀元前10世紀頃の第2代イスラエル王国の国王を彫刻した、人物彫刻の最高傑作である不朽の名作『ダヴィデ』(David)。
戦いを目前に自軍が怯むのを感じ、臆することなく敵陣ゴリアテを挑むような視線で見つめるダヴィデの緊張感に溢れる視線(瞳部分は、他に例の無いハート型で彫られている)が、この彫刻を一層表現豊かな作品にしています。

slave

何故に『瀕死の奴隷』なのかというと、ここに挙げた中で唯一実物を見たことがあるからという、単にそれだけの理由です。
経済的理由から制作中止となり、台の薄さや抵抗する奴隷の顔に残る大理石の筋から未完の作品と言われています。
男性像なのに、なぜか妙になまめかしいんですよね。
そんなこともあって、妙に印象に残っている像でしたので、あえて挙げておきました。

普段の生活をしているとどちらかというと彫刻よりは絵画の方に目が行ってしまいがちなのですが、彫刻の多い(特に海外の)美術館を巡ると断然彫刻作品の方に魅入られてしまいます。
やはり3次元は2次元に勝るということが、その造形美でもって見せつけてくれるようです。

とまあ、こんなことを書いていると、また彫刻作品に埋もれた美術館への恋慕が募りそう。

3月ともなり、随分暖かくなってきましたので、週末のひと時を偉大なる芸術家に想いを馳せながら美術館で過ごすというのも一興かもしれませんね。

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