”古代から現代までの知の饗宴。
孔子、プラトンからアインシュタイン、ケインズまで、人類の歴史に大きな影響をもたらした世界の名著100冊を、縦横無尽に論じた驚嘆のブックガイド。”
といううたい文句を冠に沿えた、「人類の歴史に大きな影響を与えた」という観点でマーティン・セイモア・スミスが選んだ人文学の入門ガイド本『世界を変えた100冊』。
ここでは、マーティン・セイモア・スミスが選んだそれぞれの本について触れてみたいと思います。
今回は、ラスト、第十弾。
91 The Second Sex – Introduction – Simone de Beauvoir 1949
シモーヌ ド・ボーヴォワール著、第二の性
人間とは男であり、男は女をそれ自体としてではなく、自分との関係において定義する。女は自律した存在とは見なされない。女は従属する性なのか、男あっての性なのか?女性への待遇について歴史を通して考察した作品であり、男女同権論の代表的作品である。
92 Cybernetics – Norbert Wiener 1948
ノーバート・ウィーナー著、サイバネティックス
心や脳の機能をダイナミックなシステムとして捉えようとした先駆的な書。
その後の人工知能、カオスや自己組織化といった非線形現象一般を対象とする研究に大きな影響を与えた。
また理系分野に留まらず、構造機能主義などの社会学にも多大な影響を及ぼし、今日では認知科学やシステムバイオロジーなどの方法論の基礎となっている。
93 Nineteen Eighty-Four 1984 – George Orwell 1949
ジョージ・オーウェル著、一九八四年
〈ビッグ・ブラザー〉率いる党が支配する全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは真理省記録局に勤務する党員で、歴史の改竄が仕事だった。しかし彼は、以前より完璧な屈従を強いる体制に不満を抱いていた。ある時、奔放な美女ジュリアと出会ったことを契機に、伝説的な裏切り者が組織したと噂される反政府地下活動に惹かれるようになるが……。
文学のみならず、二十世紀の思想、政治に多大なる影響を与えた著書。
94 Beelzebub’s Tales to His Grandson – George Ivanovitch Gurdjieff 1930-50
ゲオルギー・グルジェフ著、ベルゼバブの孫への話
人間はどこへ向かうのか。賢者ベルゼバブが語る、惑星地球の三脳生物=人間をめぐる大宇宙史にして、グルジエフ思想の根幹となる本。
地球にすむ三脳生物である「人間」を理性を もった存在であるベルゼバブが観察しその存在の奇妙さをユーモアをまじえながら、浮き彫りにしている。
95 Philosophical Investigations, Ludwig Wittgenstein 1922
ウィトゲンシュタイン著、論理哲学論考
二〇世紀哲学の方向性を決定づけたウィトゲンシュタイン前期の書『論理哲学論考』。
「語りえぬものについては、沈黙せねばならない」という衝撃的な言葉で終わる、ウィトゲンシュタインが生前に刊行した唯一の哲学書。
体系的に番号づけられた短い命題の集積から成る、極限にまで凝縮された独自な構成、そして天才的な内容、まさに底知れぬ魅力と危険をはらんだ著作。
本書は、こう締めくくられる―「語りきれぬことは語り続けねばならない」。比類なき傑作読本にして、たまらなくスリリングな快著。
95+ The Realm of the Nebulae – Edwin Hubble 1936
エドウィン・ハッブル著、銀河の世界
銀河の形状(楕円型、渦巻型、不規則型)や、銀河までの距離、島宇宙説(宇宙は一つの島に過ぎなく、いっぱい宇宙がある)などの解説をウィルソン山天文台からの写真を交えて解説した書。
96 Syntactic Structures – Noam Chomsky 1958
ノーム・チョムスキー著、生成文法
ノーム・チョムスキーの 『言語理論の論理構造』(The Logical Structure of Linguistic Theory、1955/1975)、 『文法の構造』(Syntactic Structures、1957)といった著作や同時期の発表を契機として起こった言語学の理論。
言語脳科学や言語進化に関する最近の状況、 言語と数学との関係、 人間言語にみられる併合(Merge)演算と内心構造の問題などが論じられている。
97 The Structure of Scientific Revolutions – Thomas S. Kuhn 1962
トーマス・クーン著、科学革命の構造
科学における進歩とは何か。世界観の変革は、いかにして起るか。
「パラダイム」概念を武器として、未開拓のテーマたる「科学革命」を鋭く分析し、コペルニクスからボーアまでの科学の歴史に新しい展望を与える書。
科学の社会学、科学者集団の心理学・行動学として大きな反響を呼んだ問題の書である。
97+ On Aggression – Konrad Lorenz 1963
コンラート・ローレンツ著、攻撃―悪の自然誌
比較行動学の立場から脊椎動物における《攻撃本能》といわれるものに新しい角度から光を当て、世界中に大きな反響をまき起こした書。
さんご礁を中心とした美しい世界で展開される色とりどりの魚たちの激しい種内闘争のスケッチから筆を起こし、さまざまの典型的な攻撃的行動を観察し、同一種族間に行なわれる攻撃は、それ自体としては決して《悪》ではなく、種を維持する働きをもっていることを示す。
続いて本能の生理学一般、特に攻撃本能の生理学について詳細な考察を行ない、さらに攻撃本能が儀式化される過程を興味深い実例によって述べる。
最後に、種が変化するにつれて、攻撃を無害なものとするためにどのような仕組みが《編みだされ》てきたか、儀式はここでどのような役割をひき受けるか、またこうして生まれた行動様式が、《文明をもつ》人間の行動様式とどれほどよく似ているかが、実例を通して具体的に示される。
98 The Feminine Mystique – Betty Friedan 1965
ベティ・フリーダン著、新しい女性の創造
男性と女性が平等のパートナーとなるために、女性が自立し、男性と同等な権利と責任をもって生きるということは、男性への愛や子供を産み育てたいという欲求と決して相入れないものではない。
―つくられた“女らしさ”の幻想を砕き、女性の生き方の原点を求める不朽の名著にして、女性解放理論の古典的名著。
99 Quotations from Chairman Mao Tse-tung – Mao Zedong 1966-68
毛沢東著、毛沢東語録
毛沢東の権威を確立するために作られた言葉の引用集。
この赤い書物は大衆に「反復学習」され、支持される本となった。
100 Beyond Freedom & Dignity – B. F. Skinner 1971
バラス・スキナー著、自由への挑戦
従来の心理学の見解が根本的に誤っていると指摘し、人間の行動が内在的な心因によって左右されるものという立場を批判した心理学の研究書。
心理学は実在しない人間性や人間心理、意識などの観念を持ち出すことで、科学的ではなくなっているのである。
このような心理学的な立場をスキナーは心理主義と読んでおり、心理学の本来のあり方としては行動を中心とする行動主義の立場に立脚しなければならないと考えた。