今回は身近なようで、すっかり疎遠になっているチョークについてです。
チョークといえば学生時代に学校でお世話になった代表ともいえるものですが、そんなチョークが、ここ半年程話題になっています。
というのも、チョークの老舗中の老舗・羽衣文具が廃業したため、それに伴う爆買い騒ぎが起きているというニュースなんです。
全国津々浦々に学校は存在するので、まさかチョークの業者が廃業になるなんて思いもよらないことですが、
・少子化で子どもが減少し、学校の規模も縮小傾向にある
・電子黒板が普及してきているため、チョークの需要が下がっている
・羽衣文具による後継者不在と社長の体調不良
といった要因が重なり、止む無く廃業となったとのことです。
それでも、チョークは羽衣チョークだけでもないのに、何故爆買い騒ぎになっているの、と思うじゃないですか。
それには深い理由がありました。
実は、この羽衣チョーク。
とにかく書き味が良く粉が出にくい上に折れにくいそうで、海外では「チョーク界のロールスロイス」とまで評価されてきた代物だったのだそうです。
材料には牡蠣の貝殻を粉末にしたものも混ぜ、うどんを作る機械で製造していたというのですが、こうすることでチョークがより滑らかになってコシが強くなり、気持ち良く使えるとのこと。
そのため、チョークを日常的に使用している教師の方々にとっては、羽衣チョークはほかの製品には代えがたい最高級の品質のチョークだったのです。
こうしたことから、羽衣チョークが生産終了するというニュースは昨年後半から一気に広がり、世界中から注文が殺到したとのこと。
しかも、爆買いしているのは全国の予備校や、200人ものアメリカの数学者たちだということで彼らは1トンものチョークを購入したというニュースまでありました。
こんな優れもののMade in Japan「羽衣チョーク」!
当然のように存在しているがために却ってその存在を意識できていないこうした日本製品ですが、このように絶賛されると、誇らしくもあり、改めて使ってみたくもなりますよね
こうした羽衣文具の廃業のニュースですが、韓国からやって来た1人の予備校講師が5000万円の私財を出し、羽衣文具の機械を全て買い取って、韓国国内に工場を設けチョーク生産ラインを整えてしまったというニュースまでありました。
この予備校講師も長年羽衣チョークを使って授業を行ってきたらしく、「最高の道具が最高の成果を出す」との信念の元、「羽衣チョーク」の製品存続に手を差し伸べたとのことでした。
ちまたでは、羽衣チョークの製法が韓国に流出しただの、狡猾な買収だのと厳しい意見もありますが、この製品の素晴らしさや魅力を、日本人以上に強く感じていた予備校講師が成せる行動だったことは、間違いないでしょう。
確かにチョーク自体は国内での需要は減ってきているのですが、海外に目を向ければ日本以上に高い需要は存在していますし、アジアやアフリカの教育水準や識字率が上がることは自明ですので、将来的にはますます需要が伸びる事は誰の目から見ても確かなことです。
こうした将来の動きを見据えて日本のメーカーがきっちりと事業移転できていれば、と思わざるを得ませんし、受験関連の教材メーカーや予備校あたりが取り組んでいれば、自社の宣伝を過剰な広告・宣伝費をかけずとも全国(+海外)で使われるチョークで出来たのですから、その販促範囲は爆発的に広がったに違いないのが残念です。
このように、私達の身の回りにあたりまえのように存在していながら、それが世界的には「xx界のロールスロイス」「xx界のオートクチュール」とまで評価されるような製品はチョークに限らず日本各地に存在していますが、それがきちんと日の目を見ないまま廃業の危機に瀕している製品や事業は数多あるはずです。
今回の一連の話題を一過性のニュースと捉えず、今我々の将来に向けた危機とビジネスチャンスのヒントであったということを改めて認識しておきたいですね。