スーパーナチュラルを通してみるミルトン・失楽園!

『失楽園』といっても渡辺淳一氏の原作や映画の方ではありません。
元々は創世記第3章の挿話でして、蛇に唆されたアダムとイヴが神の禁を破り「善悪の知識の実」を食べてしまったため、エデンの園を追放される楽園喪失の物語を、イギリスの17世紀の詩人・ジョン・ミルトンが纏めた叙事詩『失楽園』です。

そのアプローチは、アダムとイヴの話しは元より、
・神に叛逆して地獄に堕ちた堕天使ルシファーの再起
・ルシファーの人間に対する嫉妬と謀略
をミルトン独自の解釈により物語として仕上げたもので、その後のキリスト教にまで影響を及ぼしたとまで言われています。

『失楽園』のストーリーをかいつまんで纏めるとこんな感じです。
・ルシファーはもともと大天使であったが、神に反逆し、多くの天使を味方につけて戦を挑むも敗れ、天国を追放されて地獄に堕とされてしまう。
・地獄が神から与えられた牢獄であることを知る堕天使達だったが、ルシファーは天国を支配する野望を胸に万魔殿を建設する。
・やがて、神は新しく人間と楽園を作る。
・ルシファーは、神の計画を破壊するため、楽園に住む人間を堕落させようと企てるが、途中で反逆への疑問と恐怖を覚える。
・しかし、楽園で幸福に満ちたアダムとイヴを見たルシファーは、神への復讐を改めて決意する。
・ルシファーは、人間を堕落させるために「善悪の知識の実」を食べさせるように誘惑し、成功する。
・人間は神が課した禁を破ったため「死」という罰が科せられ、楽園を追放される。
・人間を堕落させることに成功したルシファーであるが、地獄に帰還すると神によって蛇の姿に変えられ、仲間の堕天使達に批難の声をあびせられる。

そんな『失楽園』において最も興味をそそられるのは、登場するそれぞれのキャラクター達です。
堕天使にして悪魔のルシファーは、神の偉大さを知りつつ服従よりも自由のために戦い敗北することを選んだ英雄のような描かれ方をしています。
更には
・ルシファーの片腕にして賢者のごとき威厳を備えたベルゼブル
・勇猛果敢にして天国を圧倒するため生命も惜しまぬ猛将モレク
・容貌絶美にして悪徳の権化たるベリアル
・ルシファーの頭部から生まれ、地獄の九重の門を閉ざす番人となる『罪』と呼ばれる女神(リリスに相当)
・etc…
といった多くの堕天使=悪魔達が、世界初の反逆者ルシファーの同胞として、物語に更なる魅力を与えているのです。

対する天使も精彩を欠いてはいません。
・神の意思の下、アダム達を追放する任を全うしながらもなお彼らへの憐憫を思わせるミカエル
・冷静沈着にして勇敢凛乎としたガブリエル
・神の命によってアダムたちを優しく諭す友誼心厚き天使ラファエル
・何億という反逆天使の憎悪を受けながら毅然と神の下へ立ち返るアブディエル
といった心清く正しい天使たちが登場して、物語に彩りを与えているのです。

一方、イヴの誘惑によって禁断の果実を食べてしまう弱い存在であったアダムも、神の命令に背いた後は自らの罪を認め、悲哀を胸に抱いて己の罪の報いを自らの意思によって引き受ける、偉大な魂の持ち主として描かれています。

いずれの立場の者達も気高く、毅然として崇高なる姿を見せるミルトンの『失楽園』。
一度触れてみてください。

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そして、『失楽園』のキャラクターという切り口で対比して楽しめるのが、ドラマ『スーパーナチュラル』です。
主人公ディーンとサムのウィンチェスター兄弟が、アメリカ各地を旅しながら悪霊や悪魔、怪物、天使と闘うアクション・ホラー・サスペンスなのですが、シーズン2、3あたりからその世界観が広がり、単に悪魔や悪霊を退治する一話完結のハンターモノから神々の戦いへと変遷していきました。

『失楽園』と比べながら、テレビドラマの枠を超えた神々の戦いを是非とも楽しんでみてください。

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最後に『スーパーナチュラル』のストーリーをかいつまんで纏めるとこんな感じです。
あとは、ドラマでご確認を。
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シーズン1:
カンザス州に住む若夫婦ジョンとメアリーは、長男ディーンと次男サムをもうけて幸せに暮らしていた。
しかしある晩、生まれたばかりのサムの部屋でメアリーが天井に張りつけになり、その身体から火が噴き出す。
子供部屋はあっという間に火の海になり、ジョンは辛うじてディーンとサムを連れ逃げ出した。
それから20年以上が過ぎ、サム・ウィンチェスターはスタンフォードに通う大学生だったが、兄ディーンが現れ、2人で悪霊退治を行うことになる。
しかし帰宅したサムに、天井に張りつけになり炎に巻かれた恋人ジェシカの悲劇が襲う。
サムは真実を求め復讐のために立ち上がることを決意。こうしてウィンチェスター兄弟の悪霊狩りの旅が始まった。
悪霊を倒しながらの旅の末、ようやく父ジョンと合流したウィンチェスター兄弟。
彼らは「どんなものでも殺せる銃」コルトを手に入れ、メアリーとジェシカを殺した「黄色い目の悪魔」を追い詰めるも、逆に悪魔の攻撃を受け、ディーンは瀕死の重傷を負う。

シーズン2:
ジョンは息子の命を救うために悪魔と取引し、自分の命とコルトと引き換えにディーンを救うことに成功する。
父ジョンを失った兄弟は「黄色い目の悪魔」へのさらなる憎しみを深め、ジョンの友人のベテラン悪霊ハンター、ボビーの協力も得て、再び悪霊狩りの旅に立つ。
旅の途中、悪魔の思惑の中でついにサムが命を落としてしまう。
ディーンはサムの命を救うべく、父ジョンと同じく悪魔と取引する。
しかし、その取引でサムは救えたものの、ディーンの命は残り1年となってしまう。

悪魔の予兆が頻発し始めたワイオミングにある墓地に向かった兄弟は、そこにデビルズ・ゲート(地獄の扉)があることに気付く。
ディーンはコルトに残る1発の弾丸で黄色い目の悪魔を撃ち殺したが、今一歩力及ばず、デビルズ・ゲートは開かれ無数の悪霊が解き放たれてしまう。
兄弟の悪霊狩りの旅は終わることがないのだった。

シーズン3:
ディーンとサムの前に、悪魔を殺すことの出来るナイフを持つ悪魔・ルビーが現れる。
刻々と迫るディーンの命日。
兄弟はなんとかディーンの取引を無効にしようと奔走し、ついに、すべての契約を握っている悪魔の名前がリリスであると突き止める。
しかし、サムはリリスの罠にはまり、ディーンは地獄の猟犬に切り裂かれて壮絶な最期を遂げる!

シーズン4:
4ヵ月後、ディーンは天使カスティエルによって甦った。
彼は神の命令によってディーンを甦らせたと言う。
神が施した「66の封印」が全て破られてしまったとき、魔王ルシファーが復活する。
天使の目的はルシファーの復活を阻止すること。兄弟は悪魔と天使の戦争に巻き込まれていたのだった。
幼い頃悪魔の血を飲まされたせいで超能力が使えるサムは、その能力を使うたび、本来の心優しい性格を失い悪魔に近づいていた。
最後の封印が破られることを防ぐためにはリリスを殺すしかない、というルビーの言葉を受け、サムはついにリリスを倒すが、サムの目は悪魔のそれに変わってしまう。
さらに、ルビーの口から恐ろしい真実が語られる。リリスの死こそが最後の封印を破ることに他ならないのだと言う。
ルビーはこの瞬間のために今までサムをだまし続けてきたのであり、サムは皮肉にも自らの手で最後の封印を破るという結果を生み出してしまったのだ。
そこへディーンが乗り込んできてルビーを殺すが、時すでに遅し、恐ろしい地響きと共に地獄の底からルシファーが姿を現そうとしていた。

シーズン5:
兄弟は封印を守るべく必死の戦いを続けるが、サムが悪魔の罠にはまり最後の封印を解いてしまう。皮肉にもサムがルシファーを復活させてしまったのだ。
このまま大天使ミカエルとルシファーの最終戦争<ハルマゲドン>が始まれば、それに巻き込まれる人類は死滅してしまうだろう。
一人でも多くの人の命を救うため兄弟は決意を新たにする。
しかし戦いを続けるうち、ディーンが大天使ミカエルの「器」、そしてサムはなんとルシファーの「器」たる人間であることが分かる。
そしてこの最終戦争がミカエルとルシファーの壮大な「兄弟げんか」であることも。
大天使の長であるミカエルは、最も愛し信頼していた弟ルシファーを父なる神の命令により地獄に突き落とした。
それはまさにディーンとサムの関係そのもの。
ディーンとサムが地上のミカエルとルシファーという役割であり、その対決は運命で決められていたのだった。
自分たちが器としてその肉体を明け渡せば最終戦争が引き起こされてしまう。器となることを断固拒否する兄弟であったが、業を煮やしたミカエルは二人の異母兄弟であるアダムを甦らせ、彼を強制的に器としてルシファーとの最終戦争に臨む。
そしてルシファーを倒す方法が、彼を檻に戻して再び地獄に閉じ込めることだと知ったサムはルシファーの器と化し、ルシファー、そしてミカエルも道連れに地獄の穴へと落ちて行った。
最終戦争は自らを犠牲にしたサムの行為により食い止められたのだ。

シーズン6:
サムとの約束を守りハンターを辞めて、昔の恋人リサ、そして彼の子供ベンとの平穏な暮らしを始めるディーン。
そんなディーンの姿を路上から見つめるのは、地獄の檻に閉じ込められたはずのサムだった!
ルシファーとミカエルが檻に囚われた後、サムを地獄から救い出し、天界の改革を試みたカスティエル。
彼を阻んだのは大天使ラファエルだった。
ラファエルはルシファーとミカエルを解放して黙示録のとおりに戦わせる考えだった。
そうなればサムとディーンが命がけで守った世界は滅び、あらゆる犠牲が無に帰してしまう。
ラファエルに太刀打ちできないカスティエルは、あろうことかディーンとサムには内緒で悪魔クラウリーと手を組む。
クラウリーの狙いは、怪物たちが死後に行く世界「煉獄」を支配して、怪物たちの魂を手に入れること。
カスティエルもエネルギーの塊である煉獄の魂を集め、その力でラファエルを打ち倒そうと考えたのだ。

シーズン7:
大切な友人ディーンやサムを守るために始めた計画だったが、宿敵である悪魔と組んでいることが2人にばれ、結果的に彼らを裏切ることになってしまった。
もはやすでに引き返せないところまで来てしまったカスティエルは、ついに煉獄の扉を開け、その魂を独占する。
圧倒的な力で一瞬のもとにラファエルを粉々にしたカスティエルは、自らを「神」と名乗り、「逆らう者は殺す」と非情に言い切った。
しかし煉獄には「リバイアサン」と呼ばれる、神をもってしても制御できないほど凶悪な怪物がいた。
リバイアサンを取り込んでしまったカスティエルに対し、彼を家族同然に慕ってきたサムとディーンはどう対抗するのか?
そして煉獄から解き放たれたリバイアサンのとる行動は?

シーズン8:
人間を従順な餌に変え、人間に替わって食物連鎖の頂点に立とうとするリバイアサン。
無敵と思われた彼らの倒し方は、神の言葉が刻まれた石板にあった。
「神の言葉の番人」として突如覚醒した若者ケビンの助けを借り、また、父親代わりだったハンター仲間ボビーを失いながらも、ディーンとサムは辛うじてリバイアサンの首魁ローマンを打ち倒した。
しかしローマンの爆発に巻き込まれ、ディーンと彼を助けたカスティエルは消えてしまう。
その瞬間、手下たちを引き連れたクラウリーが現れてケビンをさらって行った。
リバイアサンが消えれば悪魔の天下になる。
ディーンを失ったサムはもはや敵ではない。
すべてを見越した悪魔クラウリーの作戦だった。
そのころディーンは、ローマンと共に煉獄に吹き飛ばされていた。
あたりには怪物たちの気配。急いで脱出しなければと思った瞬間、頼みの綱のカスティエルは消えていた。
獲物を狙う怪物のうなり声がディーンに迫っていた……。
煉獄にひとり残されたディーンの運命は? 世界は悪魔の手に落ちてしまうのか?

そして、話しはシーズン9に続く。